レビュー
「正義の反対は何だと思う?」。以前こう尋ねられたときに頭に浮かんだのは「正義」だった。
日本中に吹き荒れる「論破という病」を乗り越えるためには、我々善人たちの敵を倒せばいいという「20世紀型の妄想」から目を覚ます必要がある、というのが著者の主張だ。
著者の倉本圭造氏は20年以上、日本社会の対立する色々な立場の間をつなぎながら、前向きな変化を起こしてきた。「経営コンサルタント」としての経験から現場レベルの現実を冷静にひもときつつ、同時に「思想家」の広い視野で捉え返すことで活路を見出そうとする。大切なのは、相手が持つ正義も自分が持つ正義も両方尊重する世界観、「メタ正義感覚」だという。
「分断された2つの世界」を結びつけて新しい希望を生み出すにはどうすればいいか? 具体的な問題解決へと協力し合うための道筋が、数々のケーススタディを通じて描かれている。実験と模索を続けてきた著者ならではの世界のレンズは、現実的でそれでいて優しい。相手の存在意義に真摯に向き合うことの大切さを教えてくれる一冊だ。果たして日本は「論破という病」を克服できるのだろうか。
本書の要点
・今の日本に必要なのは、「メタ正義的な議論のコーディネーター」である。
・合理性重視の「水の世界」と、人のつながりを重んじる「油の世界」の対立を乗り越えるには、「エマルション(乳化)」の発想が重要となる。
・日本社会に変化を求める際は、油の価値を壊さず、水と油のwin-winを目指すことで、水側の改革も進めやすくなる。
フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に3,300タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。