レビュー

株を買うとき、決算書やIR資料にばかり目を向けてはいないだろうか。もちろん数字の分析は必須だが、それだけでは未来を予測するには不十分である。

本書によると、見るべきは「社長」だ。
著者の田端信太郎氏は、NTTデータを経てリクルートへ転じ、R25を立ち上げた。ライブドアに入社したのちはlivedoorニュースを統括、さらにコンデナスト・デジタルではVOGUEやWIREDのWebサイトとデジタルマガジンの収益化を推進するなど、多彩な実績を持つ人物である。その後も旧LINEの執行役員、ZOZOのコミュニケーションデザイン室長を歴任し、現在はアクティビスト投資家として活動中と、幅広いビジネス経験と豊かな人脈が本書の分析に厚みを与えている。
本書で示される視点は具体的かつユニークだ。学歴や出身高校から価値観を読む、秘書や右腕の在り方から組織文化を探る、決算説明会や不祥事対応における登場タイミングから胆力を見極める――いずれも表面的な情報の裏に潜む「人間の本質」を映し出す。さらに、ファッションや部下の呼び方といった一見些細な視点からも、人望の有無やカルチャーを判断できることに気づかされる。
数字以上に雄弁に企業の姿を語る存在が「社長」であり、企業のカルチャーは社長という人間のあり方にもっとも色濃く反映されるのだ――本書を読んで、そのシンプルな事実に気づかされた。株式投資を数字だけで捉えてきた人ほど、この一冊で企業を見る眼が一変するはずだ。

本書の要点

・社長を知るのに特別なルートや内部情報は必要ない。まずは誰にでもアクセス可能な「公開情報」に注目するべきだ。
・秘書を見れば、その企業のカルチャーや社長の人間性が鮮明に浮かび上がる。


・決算説明会や炎上時の記者会見など、社長がどんな場面で姿を見せるのかに注目すると、経営者としての覚悟や人間性を知る手掛かりが得られる。



フライヤーでは、話題のビジネス・リベラルアーツの書籍を中心に毎日1冊、10分で読める要約を提供(年間365冊)しています。既に3,300タイトル以上の要約を公開中です。exciteニュースでは、「要約」の前の「レビュー」部分を掲載しています。

編集部おすすめ