レビュー
福澤諭吉といえば、旧一万円札の肖像や『学問のすゝめ』の著者として、名前も顔もよく知られている。しかし、どんな人物で、どのような人生を送ったかを詳しく知っている人は少ないのではないだろうか。
ところが、この自伝の中では、そんな人物像を覆すエピソードの数々が登場する。子どもの頃からの酒好きで、様々な場面で酒豪ぶりを発揮してきたこと。若かりし修行時代に、同年代の若者たちと一緒になって暴れまわり、たくさんのいたずらをしてきたことなど、破天荒で茶目っ気たっぷりな人であることがよくわかる。幼少期から門閥制度の不公平を憎んで育った背景も合わせて読むと、福澤の反骨心や独立心の根っこが見えてくる。
一方で、オランダ語を教えられるほど習熟したのにもかかわらず、開国後の横浜で「通じない」と気づくやいなや英語の勉強に切り替える柔軟さ、そして慶應義塾を立ち上げ「半学半教」の精神を掲げた教育者としての姿勢には、時代を見抜く洞察と大胆な決断力が光っている。
堅苦しい偉人伝ではなく、生身の福澤諭吉が語る人生録の面白さと、今も通じる生き方のヒントを、ぜひ本書から感じてほしい。
本書の要点
・福澤諭吉は中津藩の下級士族の子として生まれたが、能力があり努力しても名を成すことができない封建的な門閥制度を「親の敵」と思うほどだった。
・長崎でオランダ語を学び始め、大阪の緒方塾で本格的に蘭学を学んだ。緒方塾では熱心に勉強する傍ら、同世代の塾生の若者たちと大酒を飲んだり、暴れていたずらをしたりしていた。
・横浜で外国人にオランダ語が通じないことに気づくと、すぐに英語の勉強に切り替えた。
・慶應義塾では、西洋の学問の特徴である自然の原則としての数理と独立心を重視する教育を行った。
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