レビュー

やらなければいけないことがあるけど、最初の一歩が踏み出せない。
こんな気持ちには誰でも覚えがあるはずだが、実際にこんな悩みを口にしたら「やる気が足りない」「意志を強く持て」などとお叱りを受けてしまいそうだ。

ところが、本書によると「行動に移せない」のは意志が弱いからではない。むしろ自然の状態だというのだ。根本的な原因は、脳にある。
著者は、社会心理学、脳科学のほか、言語学や法学など、幅広い分野の知見を融合した分析を展開している堀田秀吾氏だ。メディアで活躍しているほか、多数の著書を持っており、累計部数は85万部を超えている。
行動できない要因の一つになっているのが、「失敗する不安」である。行動による失敗は、動かずに現状維持をしていれば回避できる。その一方で、行動しなかったことに対する後悔は長く後を引くことになるのだ。「もしかしたら、うまくいったかもしれない」という未練が心に残ってしまうのだ。さらに動かないことには、目には見えない大きなリスクが秘められている。
事前に自分に対する言い訳を用意して、失敗した自分を守ろうとする心理戦略「セルフハンディキャップ」など、耳に痛いことも多い。だが、安心してほしい。
それを乗り越えるための仕組みも、本書にはきちんと用意されている。行動したくない脳の仕組みや一歩を踏み出す自分の動かし方など、心理学や行動経済学、神経科学をはじめとするさまざまな分野の研究をベースに解説しているので、説得力は抜群だ。まさに最初の一歩を踏み出す背中を押してくれる一冊だといえるだろう。

本書の要点

・新しいことを始めるときに不安を感じるのは、脳がリスクを懸念していることが原因である。変化をせずに今のままでいれば、行動によるリスクを負わずにすむと脳が判断しているのだ。
・小さな失敗を繰り返すことで、行動力や判断力を鍛えることができる。失敗は減らすよりも、失敗しても立ち直る仕組みを持つことが重要である。
・「やる気が出ない」のであれば、まずは体を動かしてみることが有効だ。体を動かすことで、後から意識がついてくる。



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