レビュー
そもそも今取り組むべき一番重要な課題がわからない、プロジェクトが途中で迷走してしまう、優先順位がぼやけて手数ばかり増える、会議で決まったことがなぜか実行に移されない――これらは本書の冒頭で、著者自身が繰り返し直面してきたと述べる課題である。おそらく多くの人にも同じ経験があるのではないだろうか。
著者の中出昌哉氏は、テックタッチ株式会社のプロダクト戦略責任者(CPO)および財務責任者(CFO)であり、AI技術を活用した新規事業開発を担う専門組織「AI Central」の事業責任者を務める人物だ。東京大学経済学部を卒業後、MITでMBAを取得し、理論と実務の双方に精通する稀有な存在といえる。
本書の最大の特徴は、事業における意思決定を「課題の全体像把握」「重要課題の選別」「組織のベクトル統一」「小さな実験」の4ステップに分け、それぞれの具体的なノウハウを徹底的に言語化している点である。課題を分解する際の条件、最重要課題の見極め方、施策を実行するべきか否かをジャッジする2つの問いなど、すぐに現場で活用できる知恵が豊富に盛り込まれている。
中出氏は、生成AI時代においては「意思決定し、行動する力」こそが人間の唯一無二の付加価値になると断言する。意思決定やプロジェクト進行に苦手意識を持つ人、新規事業を任された人、自分のアイディアを形にしたい人にとって、本書は強力な味方となるだろう。意思決定力と推進力が向上し、生成AI時代における自分の価値に確信を持てるはずだ。
本書の要点
・「やりきる意思決定」は4つのステップに整理できる。すなわち、課題の全体像把握→重要課題の選別→組織のベクトル統一→小さな実験である。
・意思決定の第一歩は、経営課題をすべて洗い出し、真に重要な課題を特定することだ。
・施策の実行をためらう場合は、「本当に準備が不足しているのか」あるいは「単なる不安から先延ばしにしているのか」を見極める必要がある。「課題の全体像把握」「重要課題の選別」「組織のベクトル統一」を実施し、さらに顧客の課題を言語化できているのであれば、迷わず動き出すべきだ。
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