レビュー

企業のPR戦略のひとつに、YouTubeをはじめとした動画がある。最近は企業チャンネルも増え、趣向を凝らした動画を目にするようになった。


その中でも異彩を放っているのが、『有隣堂しか知らない世界』である。神奈川・東京・千葉を中心に展開する老舗書店「有隣堂」のYouTubeチャンネルで、2025年9月時点のチャンネル登録者数は41万人超。ミミズクのキャラクター「R.B.ブッコロー」がMCを務め、ゲストとトークをしながら文房具や書籍を紹介していく。
要約者もチャンネルを拝見したが、とにかく面白くて、仕事中なのにチャンネル内の動画をはしごしてしまった。動画を見ればわかるが、ブッコローのツッコミがキレすぎている。たとえば、人気作家の中山七里先生に「作家っていうより、ゴルフばっかりやってる経営者の見た目」と、登場早々ぶちかます。また別の回では、有隣堂では販売していない商品を全力で推す。ひと言で言えば「“面白さ”に振りきっている」のだ。本書にはそんな『有隣堂しか知らない世界』がいかにして生まれ、制作・運営されているかが時系列に記されている。
企業チャンネルは、どうしても自社製品の宣伝に偏りがちだ。PRが最優先された結果、「残念なチャンネル」になってしまうケースも多々ある。そんな中で、視聴者を純粋に魅了し、愛されるコンテンツになるには何が必要なのか。
本書にはその要諦が詰まっている。
本チャンネルのファンはもちろん、企業の広報担当者、動画制作に興味のある人におすすめの一冊だ。

本書の要点

・書店業界が低迷する中、有隣堂の松信副社長は「超弩級の新しいチャレンジ」を探していた。そこで2019年当時まだ少なかった、企業によるYouTubeチャンネルを開設することにした。
・多くの人に見てもらえる良い企画は、古いアイデアと新しいアイデアが盛り込まれている。
・YouTubeチャンネル『有隣堂しか知らない世界』は、「素直さ」と「面白さ」を重視している。そのために、MCはゲストと事前打ち合わせをしない、チャンネルは面白い動画のみで構成する、ゲストにチェックをさせない、といったルールを徹底している。



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