レビュー

部下の成長を支援するとき、どんな言葉をかけるべきか――。
いま多くの上司がパワハラと見なされることを恐れ、批判や指摘を避け、無難なコメントに終始している。

どこまで厳しくすべきかの線引きに迷い、ならば自分で片づけた方が早いと考える者も少なくない。短期的には楽でも、その帰結はマネジャーにのしかかる負担、伸び切れない部下のフラストレーション、そしてチームの学習能力の痩せ細りである。
本書はその閉塞感に対する解を示す。キーワードは「鏡」だ。感情や好悪ではなく、現場の事実を淡々と拾い集め、そのまま提示する。大げさな評価や説教の装いに逃げず、相手の言動を「鏡のように」映す。そうして初めて、当人が抱える課題が輪郭を帯びて立ち上がり、次の一手が見えてくる。
事実に立脚しないフィードバックは、ポジティブであれネガティブであれ、表面をなでるだけで本質に届かない。だからこそ本書は、「耳の痛い」助言を実務の手順へと落とし込み、日々の現場で実行に移す勇気を与える。褒める場面でも叱責の場面でも、拠り所は同じだ。「事実(fact)」を鏡に映し出し、相手の理解に届く言葉に整えるのである。
ここに書かれた作法を粘り強く試せば、あなたの部下やチームメンバーは変わり、そしてあなた自身も変わるだろう。
静かながら確かな変化の手応えをもたらす一冊である。

本書の要点

・フィードバックは「経験軸」と「ピープル軸」を土台に、情報通知と立て直しを統合する育成技術である。
・フィードバックは「具体的に相手の問題行動の事実を指摘する」必要があるため、事前準備が不可欠だ。相手の情報(事実)をできる限り集めて、それを「鏡のように」映し出し、客観的かつ正確に通知する。
・チームを動かしたり人を伸ばしたりするには、ポジティブフィードバックも必要だ。ポジティブフィードバックには、部下の仕事満足やモチベーションの向上などが期待できる。



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