レビュー

やる気満々なのに遅刻しがちな人、真面目なのにうっかりミスが多い人、意地悪な性格でもないのに言うことがいろいろ変わる人。どうしてそうなるのか考えはじめると、こちらのほうがストレスを抱えてしまうものだ。

そうした特定の人物でなくても、友だちと行った旅行について細かな記憶が違っていたり、パートナーと「言った・言わない論争」になったりといった現象に出くわしたことのある人は、けっして少なくないだろう。
これらの裏側には「記憶のメカニズムが働いている」という。「そんなことは言ってない!」と怒り出すことや、うっかり忘れのようなものは、人間性や能力の話だと思われがちだが、実は私たちが「記憶の深層心理に支配され、動かされている」存在だから、起きていることなのだ。その構造を知れば、妙だなと感じた相手や出来事に対しても、イライラすることを減らしていける。本書は、心理学の知見を豊富に援用しながら、具体的な処方箋を提供してくれる一冊だ。
ちょっとした記憶のすれ違いが、思わぬミスや関係の悪化につながることは多い。「何度も確認するよう言ったはずが、数字を間違えている」「子どもを遊びに連れて行ってくれるって約束したのに、予定を入れられた」。そうしたことは、どれだけ気をつけていても、誰にでも起こりうる。なぜなら、記憶とはそういうものだからだ。
記憶力に自信がある人でも、本書を読めば、自分の記憶がいかに脆いか、振り返る機会となるに違いない。

本書の要点

・有能だったり真面目だったりするのにミスをする人は、記憶力に問題があるのではない。回想記憶と展望記憶のメカニズムにそのヒントがある。


・現在は記憶の再構成理論が主流である。人は「記憶内容に何らかの意味づけをして想起する傾向があり、その意味づけの方向に想起内容が歪んでいく」。
・「知覚には能動的な取捨選択が伴う」という選択的知覚があるため、記憶される出来事への知覚は見る人、聞く人によって違いが生じる。



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