レビュー

現代社会では、いろいろな技術が発達して生活が便利になり、経済が発展して様々な物に囲まれた豊かな生活ができる。それなのに、多くの人は生きづらさを抱えていて、窮屈そうに生きているように見える。

いったい、それは何故なのだろうか。
心が疲れてしまったとき、どこかでゆっくりと一息ついて休みたくなる。自然に囲まれた場所に行ったり、温泉に入ったりする人もいれば、カフェでゆったりと過ごす人もいるだろう。
本書の著者は、国分寺で「クルミドコーヒー」と「胡桃堂喫茶店」を開業し、その店を中心としてクルミド出版や哲学カフェ、シェアハウス、「地域通貨ぶんじ」などを運営している影山知明氏だ。都会に行けば様々な種類のチェーン店系列のカフェがあるが、そういった店はどこか、カフェに行くこと自体が目的となってしまう。
しかし、カフェは街の人がなんとなく集まる場所でもある。たまたま集まった人たちそれぞれが、できることをやっていくことで、手に届く範囲の街が変わっていく。それによって、システムに当てはめられた生き方から解放されていく。本書を読むと、国分寺という街の生き生きとした様子が伝わってくる。
慣れ親しんでいる現代の社会のシステムを、すぐに変えることは難しいかもしれない。だけど、木が芽吹いて少しずつ育っていき、やがて大樹となるように、本書で提案されているイメージをじっくりと育てていきたい――。そう感じさせられる良書である。

本書の要点

・現代の社会は、目的を達成するための効率化を目指す「リザルトパラダイム」で成り立っているが、そのシステムに人を合わせるのではなく、一人一人のいのちのかたちに合わせた「プロセスパラダイム」を目指したほうが良い。
・△(リザルトパラダイム)の社会は、設計図をもとに効率的に作り上げるが、▽(プロセスパラダイム)の社会では、一人一人の「やりたいこと」が種となり、場としての土に受け止められ、それぞれの形に育っていく。
・自己の利益を最大化させる「テイク」に基づく経済ではなく、人に贈り、感謝を与え合う「ギブ」に基づいた「友愛の経済」が「もう一つの道」として必要とされている。



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