レビュー

やらなければならないことがあるが、なかなか行動に移せない。そんな悩みを抱えている人も多いはずだ。

本書では、すぐにやらない原因は「性格」でも「やる気」でもなく、脳がその段階に至っていないからだと説明する。つまり、すぐにやるスキルは先天的なものではなく、後天的なものであり、今からでも身につけられるということである。
その脳の仕組みについて、作業療法士でもある著者が、患者に対するリハビリテーションから得た知見をもとに解説している。たとえば脳の損傷で体が動かなくなってしまった際、問題となるのは動かない体ではなく、それを動かす「脳」に問題があると考える。そのため、リハビリテーションでは体を動かしていくのではなく、脳を動かしていくように治療するのだという。この際に使われるのが「経験的な言葉」である。「主観的な言葉」や「客観的な言葉」での呼びかけでは効果のなかった患者が、「経験的な言葉」で呼びかけると、それまでとは反応が変わる。それまで腕を動かせなかった人が、動かせるようになっていく。そんな様子自体も興味深いが、それを日常の「すぐやる」ことにも応用しようというのが本書の面白いところだ。
根性論に頼らず、科学的な視点から、「すぐやる」ための改善策を提示しているので、「自分にもできそう」と思える内容が多い。「すぐやる」ことに挫折してきた人にも、参考にできることの多い一冊である。

本書の要点

・やるべきこと以外に気を取られてしまうなら、脳に「他のもの」を見せること自体を避けなければならない。


・リハビリテーションでは、経験している通りの言葉を患者さんから引き出し、その状態からいかに体を動かせるようになるかを検討していく。この手法は、すぐやる力を上げるために応用できる。
・人には相手の話からキーワードだけを拾い、脳内に用意してある文法で理解する「メンタル文法」が備わっている。自分のモチベーションを上げる言葉を見つけ、新しいメンタル文法をつくることで、すぐに行動を起こせる脳をつくることができる。



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