レビュー

あなたは本を読みますか? 最近、本屋さんに足を運んだのはいつですか? 本は、好きですか?
SNSやネットニュースも含めれば、誰かが書いたものを日常的に読んでいる人は少なくない。自分が発信者になることも、珍しくはなくなった。

その時代に、あえて本のかたちに向き合うことを、どれだけの人がしているだろうか。
長野県松本市、創業1955年の老舗印刷会社である藤原印刷。本書は、そこで新たな本づくりのあり方に邁進する人たちの物語だ。「印刷会社は黒子業」だが、藤原印刷はとあるきっかけから、「自分のために本をつくる人」のコンシェルジュを始めた。出版社のビジネスとは無関係に、内容から配布方法まで「ぜんぶ自分で決められる」本であり、それらは「唯一無二の顔をしている自由な本」である。その制作を傍らで支援する、まさに「いちばん近くで本づくりを見つめる」うちに、新しい本づくりの引き出しも増えていったという。
「自分のために本をつくる」なんて、考えたことがない人は多いだろう。しかし、それがいかに魅惑的で取り組みがいのあるプロジェクトであるか、本書を読めば火を見るより明らかだ。気づけば、あなたも本をつくりたくてうずうずしているに違いない。
本をつくるという工程のすべてが、あなたを自由にする。なぜ紙の本はなくならないのか。その答えは、本書のなかにある。

本書の要点

・「つくり手の『want』を詰め込んだ本」が「自分のためにつくる本」である。マーケットのことは考えず、自由な発想で、自分の「好き」を詰め込み、既存の出版流通に乗らない。
・個人のつくり手のほとんどは、ベストセラーを目指してはいない。利益ではなく「自分が納得するか」が優先される。そんななかから、「思いがけず売れていく」本があらわれることもある。
・これまで藤原印刷が関わってきた本のつくり手たちの動機は、「記録」「儀式」「表現」「偏愛」の4つに分けられる。



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