レビュー

「任せる」というのは、とても難しい営みである。部下を信頼してすべてを任せれば「丸投げ」と言われ、よかれと思って細かく状況を確認して指示をすれば「マイクロマネジメント」と言われる。

こうしたジレンマに身に覚えのある人は少なくないだろう。果たして「任せ方」の答えはどこにあるのだろうか。
本書が提案する考え方は、「任せることは信頼の表現であり、リーダーの成長でもある」というものだ。単に仕事を振るだけでは人は育たない。任せるとは、相手の能力を信じ、判断や行動を委ね、失敗さえも学びに変えるプロセスである。任せることを学ばなければ、自分ひとり以上の仕事は永遠にできるようにならない。プレイヤーにとどまることを乗り越え、リーダーとして成長するとは、自分という限界を超えるひとつの方法なのである。
著者はリクルート出身で、現在はリーダー育成の専門家として知られる伊庭正康氏だ。これまで『できるリーダーは、「これ」しかやらない』など、リーダーシップに関する数多くの著書を世に送り出してきた。
本書では、「任せ上手」になるためのノウハウを「3つのセオリー」として整理し、任せるための下準備、実践、そしてフォローまでを順を追って解説する。
理論的でありながら実践的でもある本書のあり方は、メソッドと経験則の両面から書かれている点で、著者自身が重ねてきた厚い試行錯誤を思わせる。
「任せられない」ことに悩むリーダーにとって、本書は気づきと成長をもたらす一冊となるだろう。

本書の要点

・上司の役割は、部下の得手や主体性を引き出すことである。部下を育成し、思い切って任せていくことが必要だ。
・リーダーは「できるようになったら任せる」から、「任せるからできるようになる」という発想の転換をしなければならない。
・部下に仕事を任せる際のセオリーは、(1)安心して任せるための下準備をする、(2)7つの基本原則を使って実践する、(3)フォローをしてさらなる成長に導く、の3つである。



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