レビュー
お金は絶対的な基準なのだろうか――。本書を読むと、そう問い直さざるを得ない。
お金は大切だ。あればあるほどいいというのも疑いようがない。だからこそ誰もがお金を稼ごうとするし、私たちは「お金を稼ぐ人が偉い」「老後に備えて貯めなければ」と信じてきた。
しかし著者の田内学氏は、この価値観にこそ大きな落とし穴があると指摘する。といっても、お金を稼ぐ行為を批判しているわけでも、清貧を礼賛しているわけでもない。では、本書はどういった切り口で、お金という絶対的指標を疑問視するのだろうか。
本書が明らかにするのは、貨幣の本質である。お金は、それを支える「誰かの労働」が存在してこそ価値を持つ。私たちは、自分でできないことを、お金を払って誰かにしてもらっているのだ。つまりお金で買うという行為の向こう側には、必ず誰かの労働が隠れている。
そこから浮かび上がるのは、「お金が何より大切」という価値観が日本社会に招く暗い未来だ。老後に備えて2000万円を貯めたとしても、少子高齢化が進み、仕事を担ってくれる人がいなくなれば意味はない。
老後不安を抱え、資産を増やそうと努力している人は多いはずだ。だが、正しく現実を直視しないと、ただ心をすり減らすばかりである。本書を通して現実を見つめ、「お金の不安という幻想」を振り払ってこそ、適切に問題と向き合うことができるだろう。老後を見据えて貯蓄や投資に励んでいる人に、ぜひ読んでほしい。
本書の要点
・自分のモノサシを持てば、不安を煽る情報に動じなくなる。
・社会を支える仕事であっても必ずしも高収入とは限らないため、老後不安が強まるほど人々は稼げる職種へと流れていき、人手不足が深刻化する。「お金を稼ぐ人が偉い」という空気が、さらにその流れを加速させている。
・お金があっても、サービスを提供する人がいなければ何も得られない。私たちが今取り組むべきなのは、お金を増やすことではなく、人手不足を解消することだ。
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