レビュー
ラーメンが高くなってきたように感じられて久しい。ラーメンに限らず、円安やインバウンドの影響も受け、ありとあらゆるものの値段がインフレしはじめている日本ではあるが、そんな中でラーメンのお店はどのように値付けをしているのだろう。
そんな思いで本書を読みはじめて、度肝を抜かれた。さすが当代一のラーメンライター・井手隊長。余計な理屈は抜きにして、ひとまず紹介されているお店がすべて美味しそうである。しかも美味しそうなだけならまだしも、その店にある歴史や想いも語られているのだから、行ってもいないのに、読んでいるこちらはすでにファンになってしまう。さっそく、すべてブックマークした。
いわゆる名店や知る人ぞ知る店以外に、誰でも知っているチェーン店の工夫や取り組みが詳細に紹介されているのも、本書が単なるラーメン好きのための本ではないことを感じさせられる。著者の言うように、ラーメンはこれまですべてが一緒くたに語られがちだったが、今後はそばや寿司のように、カジュアル向けから高級志向まで、カテゴリ分けが進んでいくのだろう。そしてそれぞれがそれぞれの良さを発揮していくに違いない。
著者の多角的なラーメン評に唸らされる一冊だ。誰が言ったか、「ラーメンは情報を食べている」という言葉があるが、本書は間違いなくあなたのラーメン体験にコクと奥行きを加えてくれるはずだ。
本書の要点
・ラーメンには、価格が1000円を超えると、どんなに高級食材を使っていても、どんなに美味しくても高いと感じてしまう「1000円の壁」がある。
・ラーメン店は、物価と人件費が上がる中でも長年値上げをせずにきた。ところが、麺作り・スープの仕込みにかかる人件費や小麦・背脂の高騰などにより、いまや店を続けられないレベルの危機に瀕している。
・世界食となったラーメンは、低価格チェーン・1000円前後の庶民派・高価格進化型の三極化が進むだろう。
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