レビュー

IT業界でありながら人手不足とは無縁、上場10年で売上高50倍、1年で昇給600万円アップ――。こうした驚きのエピソードが次々と登場するのが株式会社SHIFTだ。

同社は、従来は裏方とされがちだったテスト事業の領域で、目覚ましい成長を遂げている。
その急成長を支えたのは「徹底した人材戦略」である。極めて短期間で、人材施策の成果を業績や株価にまで反映させた点は特筆に値する。人的資本専門記者である著者は、丹念な取材を重ねるにつれ、同社は社会の価値観そのものを変えつつあるのではないかと感じ始めたという。
SHIFTの人事評価・育成では、1200時間を費やす評価会議、市場価値に基づく評価報酬制度、450項目以上に及ぶ人材データベース、年収増に直結するキャリアアップ制度「トップガン」といった独自の仕組みがある。人事戦略の実現には、目標に沿った一貫性のあるグランドデザインが重要だが、同社はまさにその理想を体現している。本書を通じて、その原点には創業者の丹下大社長が「1%の天才よりも99%の普通の人々の能力をいかに発揮させるか」に対して、並々ならぬ信念を持っていることが伝わってくる。
本書では、人事評価、育成、採用、エンゲージメント向上施策など、SHIFTの人材戦略とその構造を多方面から解剖していく。人的資本経営を志す経営層や人事担当者、人材マネジメントに関心のある読者にとって、参考となる事例が数多く確認できるはずだ。まさに私たちの常識を「シフト」させてくれる革新的な一冊である。

本書の要点

・SHIFTの急成長を支えているのは「徹底した人材戦略」とその一貫性であり、人的資本経営を体現してきた。
・テスト業務と人材の2つのブラックボックスを解体し、独自のCAT検定を生み出したことが生産性の飛躍につながった。


・人材の評価では、役員が年間1200時間を投下し、社員の年収を上げることを先行投資として捉えている。



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