【今日の一冊】会話の0.2秒を言語学する
会話の0.2秒を言語学する (水野太貴/新潮社) 画像（1枚）


レビュー

「あのさ、昨日のあのテレビ、見た？」「んー、そうだな、面白かったよな」
質問が発せられてから応答まで、この間、０．２秒である。
実際の会話の場面を思い浮かべてみると、たしかにこのような単純な質問に答えるだけなら、即答できる。

そんなの普通だろうと思うかもしれないが、本書を読めば、これがいかにとんでもないことかがわかってくる。
著者は大人気YouTube・Podcastチャンネル「ゆる言語学ラジオ」のスピーカーである水野太貴氏だ。水野氏は冒頭に見た、会話の応答までの０．２秒に何が起きているのかを、「２００ミリ秒の謎」として、言語学史を概観することでその答えを探ろうとしている。単語や文の意味を扱う「意味論」、単語と単語の結びつきのルールを明らかにする「統語論」、文をどのように解釈するかを考える「語用論」、さらには言語学を飛び出して、会話の中の沈黙やジェスチャーまで扱う「会話分析」など、言語にまつわる幅広い分野が登場する。
言語学に限らず、学問分野は扱う領域ごとに細分化されており、領域をまたいで全体を概観するのは意外と難しい。自称「一介の言語好き」である水野氏だからこそ、言語や言語学のおもしろさを存分に味わえる構成になっている。構える必要はない。ぜひ気軽にページをめくってほしい。

本書の要点

・会話で、一人が話し終わったあとに次の人が話し始めるまでの「ターンテイク」の平均は２００ミリ秒である。たった２００ミリ秒で会話の順番交替を行うには、言語にまつわるどのような知識が必要で、頭の中でどのような処理がなされているのか。この「２００ミリ秒の謎」を言語学から考える。
・相手の発話を聞き、理解し、それに対する応答をするまでの間には膨大なタスクが処理されている。

私たちが日々行っているコミュニケーションは、実は非常に高度で複雑な営みである。



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