レビュー

繁華街でも、身近な街なかでも、中国人の姿を見かける機会が増えたと感じることは多いのではないだろうか。インバウンド客の増加で、数年前と比較しても外国人と接することは多くなっているので、中国人を見かけやすいのも当然ではある。

しかし本書では、旅行客として一時的に滞在するのではなく、日本国内に在留する中国人の数が急激に増加していることが報告されている。
日本に住む在留中国人の数は、2026年には100万人を突破する見込みである。この数は、2024年末時点の「在日コリアン」の数、約43万人の2倍以上だ。日本に移住する中国人は、少し前までは高学歴層、富裕層が中心だったが、いまではごく一般的な中国人が増えているという。安倍政権下の制度改正で在留資格や永住資格の取得要件が緩和され、他の先進国の潮流とは異なり、日本が以前より移住しやすい国になったためだ。少子高齢化、過疎化に悩む地方にとっては、街に活気が戻り、若い人が増える点で、渡りに船となっているケースがあることも、本書で説明されている。
これだけの数の中国人が移住すれば、日本社会も大きな変化を迫られる。その変化に対して、感情的に反発するのではなく、冷静に向き合っていかなくてはならない。本書は、丁寧な取材とデータにもとづいて、可能な限りの客観的な情報が提供されている。まさに近づいている日本の将来を考えていくための、大きなヒントとなるだろう。

本書の要点

・安倍政権下の制度改正によって、日本は一定の条件をクリアすれば永住権の取得を目指せる「移民国家」となった。増加しつづける在留中国人の数は、2026年には100万人を超える見込みだ。


・日本に留学後、そのまま就職して数年経てば、容易に高度外国人材に認定され、永住権取得に近づく。また、日本の旅館や不動産を買収して「経営・管理ビザ」を取得することも、永住権取得の近道となっている。
・高田馬場、池袋、川口、上野、西成など、日本国内のさまざまな場所に「内なる中国」と呼べる新しい「中国経済圏」とコミュニティが生まれている。



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