レビュー

よく人生やキャリアは「山」に例えられる。目標を定めて歩き続け、途中の障害を乗り越えてついには頂点に立つ――それが「成功」とされることも多い。

メディアで“トップランナー”として取り上げられる人は、ほぼ例外なく何らかの「頂点(ピーク)に到達した人」である。
だが、現実はそんなに単純ではない。キャリアが途中で途切れることもあれば、複数の道が現れることもある。どれが山頂につながる道かわからないまま、とにかく歩き続ける――多くの人にとっての「山」とは、むしろそのようなものではないだろうか。
本書の著者・土屋礼央さんは、「自分の仕事のピークはすでに過ぎた」と思ってみることを勧めている。事実かどうかはひとまず脇に置き、そう捉えることで視野がぐっと広がり、仕事の選択肢も増えるのだという。
「ピークを過ぎる」という言葉にはネガティブな印象がつきまとうが、そこは捉え方次第である。山頂を目指している間は頂上しか見えないけれど、実はきれいな花畑が広がっていたり、おいしいお団子を出す茶屋があったりもする。山頂だけを見つめるのではなく、周囲をゆったり見渡すことで、意外な可能性がいくつも見えてくる――要約者はそう受け取った。
本書は、土屋さんのほどよく肩の力が抜けたエッセイ集である。楽しみながらマイペースに働くコツが、土屋さんらしい言葉でカジュアルに綴られている。
仕事人生は長い。
本書を漂うゆるっとした空気を感じながら、自分なりの登山の楽しみ方を見つけてほしい。

本書の要点

・「自分の仕事はピークを過ぎた」と思ってみると、視野が広がって仕事の選択肢が増える。
・大きな目標を達成した時だけでなく、日々、小さなことで自分を褒めてみよう。褒めのハードルを下げると、目標へのハードルも下がって心が軽くなる。
・人生はパスタと同様、「アルデンテ」がちょうど良い。芯が一本通っていれば、あとはやわらかくても良いのである。
・世界は引き分けで出来ている。「自分だけ幸せ」は長続きしない。どんな場面でも「最後は引き分けで終わらせる」と心の底で思っている事が大切だ。



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