レビュー
普段読書をしない人でも、「ごん、お前だったのか」というセリフを聞けば、ほとんどの人があるシーンを思い浮かべることができる。『ごんぎつね』は長年国語の教科書に採用され、世代を超えて認知されている。
本書によると、文学の世界に身を置く人たちは、国語を批判しがちな傾向にある。国語で文学は扱えない、文学は国語で出会うものではないという意見さえある。しかし、国語の教員でもあり批評活動を行う作家でもある著者は、文学に馴染みの薄い人にとって、国語が果たす役割の大きさは無視できないと指摘する。国語の授業という形式で文学を扱うことにはたしかに限界がある。だが、国語が文学を扱っていること、そして多くの人が国語の授業を通して文学作品との出会いを果たしていることもまた事実だ。
本書は、文学に親しんでいる人にとっての「文学」だけを「文学」として論じるのではなく、「国語の教科書の文章」を「文学」だと思っている人たちにとっての「文学」について考え、「国語」と「文学」のありかたを再設定しようとする。遠い記憶の中で、ただの一教科としてしか認識していなかった科目が、本書を通じて新たな光を浴びる。その意味で、我々は国語と出会いなおすのである。
本書の要点
・学習指導要領の改訂に伴い、文学側から批判が上がった。論理国語と文学国語を分けるのは、結果的に文学を軽視しているのではないかというのがその中身だ。
・しかし一昔前は国語が文学を取り上げることを、文学側は批判していた。この転換は文学・文芸誌上で文学と国語を対立させるような磁場によるものではないだろうか。
・小説を読むとき、私たちは小説に書かれている文字だけで描写を判断しない。必ず作品外の《常識》の力を用いている。その点では、国語も文学も同じだ。
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