レビュー
少し前にスペインを訪れた際、サグラダ・ファミリアのチケットがどうしても取れず、観光客の波にもまれながら外観の写真だけ撮り、すごすごと退散した。だが本書を読んだ今となっては、「入れなくてよかった」とさえ思う。
なにしろ1978年からサグラダ・ファミリアで仕事をしてきた彫刻家が、ガウディと大聖堂の魅力を、日本人ならではの視点を交えながら語っているのである。本書刊行は2006年だが、著者の語るガウディの精神性やメッセージは少しも色あせることないどころか、効率とテクノロジーが支配する現代だからこそ、むしろ輝きを増して私たちに伝わってくるようだ。
本書によれば、サグラダ・ファミリアは2020年代の完成を目指して進行している。喜ばしい計画ではあるが、本書を読んだ今では「神はお急ぎになりません」というガウディの言葉を反芻したくなる。著者に連なる多くの職人たちが捧げてきた膨大な時間と愛にふさわしい「完成」であることを、にわかファンながら願わずにいられない。
通読すれば、一般に狂気の産物のようにイメージされがちなサグラダ・ファミリア像は誤解であり、むしろ自我をゼロに近づけたからこそ実現した至高の建築であるということがよくわかるだろう。宗教を超え、偉大なものをつくろうとする人間のマインドセットやリーダーシップ論としても読める一冊だ。
本書の要点
・サグラダ・ファミリアは、イエスと聖書の物語、キリスト教の象徴が細やかに表現された「石の聖書」とも言える存在だ。大聖堂の建築や彫刻には、ガウディのメッセージも数多く込められている。
・内戦後、資金やスタッフが集まらず、サグラダ・ファミリアの建設は極めて困難な道のりをたどった。
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