レビュー

本書はスイス時計の雄「ロレックス」の経営を振り返り、その強さに学ぶ一冊である。
なぜロレックスなのか。

それは同社が「時計=時間を知らせる便利なもの」という概念を打ち破り、「夢や感情を伝えるアクセサリー」に昇華させたという、世界初の快挙を成し遂げたからだ。副題にあるように、著者はその戦略を「『ものづくり』から『ゆめづくり』へ」と表現する。
同社はプライベート・カンパニーであり、これまで自らの歴史や戦略、業績について発表したことがない。そのため、本書の執筆プロセスは非常に困難なものだったと予想するが、著者は時計博物館や時計協会、古文書館出自の資料などから、説得力十分の書に仕上げた。
著者はスイス生まれで、ラグジュアリービジネスの研究に長年従事し、現在は大阪大学大学院の教授を務める人物だ。もともと2024年3月にスイスでフランス語の本として出版されたが、大いに売れたため、英語、ドイツ語、そして日本語に展開された。
記述には論文調の硬さがあるが、読んでいくうち気にならなくなり、むしろ中身に引き込まれる。全3部8章に分かれており、各部の冒頭に解説が、各章の終わりには結論が付されているため、すんなりと読み進めることができるだろう。
ラグジュアリービジネス関係者はもとより、自社製品のコンセプトや付加価値のつけ方に腐心するビジネスパーソン必読の経営書である。

本書の要点

・20世紀初頭、ロレックスはドイツ人商人ハンス・ウィルスドルフにより創業された。彼は早い段階から時計の機能性だけでなく、独創的な製品として差別化する必要を感じていた。
・戦間期、ロレックスは自動巻き防水腕時計を開発・販売して成功を収めた。

当時は他の時計メーカー同様、高品質の時計を大量生産して売るビジネスモデルを採用していた。
・ロレックスは世界最大の広告会社J.ウォルター・トンプソンと提携し、革新的な広告を打ち出していった。この広告戦略により、ロレックスは単なる時計(精密機械)ではなく、「権力と自己実現の成功」を表現するアクセサリーとなった。



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