レビュー

科学をめぐる課題は、さまざまな場面で繰り返し姿を現してきた。それが可視化された出来事のひとつが、新型コロナウイルス感染症のパンデミックだった。

専門家の助言が状況に応じて変化していく様子に、人々は戸惑った。ロックダウンに関する意思決定は政治的対立と強く結びついていたし、異例の速度で開発に成功したワクチンには陰謀論がつきまとい、接種をためらう人も少なくなかった。
政治における意思決定が科学的知見と整合していない現状に危機感を抱いた物理学者ソール・パールマッターは、カリフォルニア大学バークレー校の同僚である哲学者ジョン・キャンベル、社会心理学者ロバート・マクーンとともに、「科学的思考とは何か」を問い直す議論を始めた。その成果として開講された講義は高い評価を受け、他大学へと広がり、やがて一冊の書籍として結実する。
本書を読んだうえで先のパンデミックを振り返ると、個人と社会の両方のレベルで科学的思考が十分に共有されていなかったことが、混乱を長引かせた側面があったことに気づかされる。いま私たちができることは、科学というシステムを理解し、科学的思考を身につけて、目の前に山積する地球規模の難題に働きかけること、次に訪れる危機に備えることだろう。
YouTubeには原著刊行時のトークセッションの様子が公開されているので、ウォームアップとして動画に目を通すのもいい。本書で言及されていたジョン・キャンベルのスコティッシュアクセントにも注目だ。

本書の要点

・人類が西暦3000年まで豊かに生き延びるためには、「サード・ミレニアム・シンキング」という思考のフレームワークが必要だ。
・サード・ミレニアム・シンキングは、不確実性を考慮して予測を立てる蓋然的思考、解決を信じて難題に取り組み続ける科学的楽観主義、人間の認知バイアスを克服するブラインド解析、事実と価値を切り分けて議論する、といったツールから構成される。
・サード・ミレニアム・シンキングは、科学が長年培ってきたメソッドの集大成であり、これからの時代は科学者以外も身につけなければならない。



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