レビュー
小説、音楽、映像、マンガ、イラストレーション――「創作」とは、その道のプロフェッショナルが職業的に行う特権的なものだと思われがちだ。特に現代では、なにかをはじめようと思った瞬間に、SNSを通じて無数の自分より「上手い」人が可視化された状態からスタートすることになる。
しかし本来、創造性と表現の力は誰もが持っているものだ。子どものころは誰もが表現者であったにもかかわらず、大人になると多くの人がその感覚を失ってしまう。本書は「手放す」「つくる」「続ける」と3つの要素で創作を捉えているが、特に自信のなさや他者との比較、オリジナリティへの恐れといった思い込みを「手放す」ことからはじめるべきだと示している点は重要だ。
表現とは特別な才能や職業でなく、存在や行為そのものが他者との関係を生む行為であり、それが生きる態度の変化につながっていく。自炊や電話中の落書き、会話や調べ物、贈り物といった日常行為すらも「小さな表現」であると捉えれば、創作活動は誰にとっても身近なものになっていく。
創作は、単なる成果物ではなく変化の旅だと本書は語る。表現と生きることを結びつけ、つたなさを受け入れながら歩む道を肯定することは、ビジネスにも通じる部分がある。自分より稼いでいる、実績がある、数字を出している、格が高い企業に勤めている――そうした比較を続ける限り、結局のところどこまで行っても「一番」になることは不可能だ。成長ではなく変化を楽しむこと。旅をするように道のりを味わうということ。創作をするというより、創作を通じて生きることそのものを、本書は問い直している。
本書の要点
・表現は特別な才能や職業ではなく、人の存在や行為そのものが他者に変化を与える営みである。
・創作はオリジナリティの発露ではなく、模倣がうまくいかない差分の積み重ねとして生まれる。
・成長を目的とせず、つたなさや傷つきを含めた変化を引き受けながら続けることが、表現を生きる力に変える。
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