レビュー

ラグジュアリーなサービスさえ用意すれば富裕層に注目され、自然と売れていく――。本書を読むと、そうした発想の浅さに気づかされる。


著者の岸田大輔氏は、株式会社クレディセゾンにて富裕層ビジネスを立ち上げ、ブラックカード事業にも携わった人物だ。2020年以降、1000人以上の富裕層と実際に会い、向き合い、試行錯誤を重ねてきた。その積み重ねを通して獲得した知見が、業種を超えて応用できる形で、事例とともに明かされている。
本書の前提にあるのは、富裕層そのものが大きく変化しているという事実だ。豪邸に住み、高級車やラグジュアリーブランドを所有し、豪華な料理やワインを楽しむという典型的な「お金持ち」像は、すでに過去のものとなりつつある。現在は「旧富裕層」と「新富裕層」に大別され、その中にもグラデーションが存在するそうだ。
では、こうした富裕層とどのように信頼関係を築き、どんな提案をすべきなのか。岸田氏はその問いに対し、極めて具体的な行動指針を示していく。そのうちの一つが、多くの店に足を運んで、自分がどこに魅力を感じ、何に違和感を覚えたのかを簡単にメモすることだ。そうした地道な経験の蓄積が、富裕層との会話の解像度を高め、的確な対応につながっていく。
そのほかにも、富裕層に対する営業やマーケティング、企画づくりの考え方が惜しみなく公開されている。富裕層は何を考え、何に心を動かされ、どこに時間とお金を投じるのか。
富裕層を相手にビジネスをするのであれば、一度は手に取っておきたい一冊だ。

本書の要点

・現代の富裕層の価値観は、かつてないほど多様化している。富裕層ビジネスを展開するのであれば、固定観念に縛られることなく、ビジネスターゲットを高い解像度で理解することが不可欠である。
・富裕層に「本当に価値のあること」を届けるためには、意外性を用意し、期待の一歩先を行く提案を行い、自身が大切にしている想いをストーリーとして伝える姿勢が欠かせない。
・富裕層に対して有効なマーケティングの戦略は、プレミアマイゼーション戦略、ランクアップ戦略、ロイヤルカスタマー戦略の3つだ。



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