レビュー

「自分には書く才能がある。ただ、まだ見出されていないだけだ」――そう信じたい気持ちと同時に、それだけでは足りないのではないかという不安を、多くの書き手は抱えているだろう。

本書は、そんな不安に真正面から向き合い、プロの視点からストレートなアドバイスを提示する一冊である。
著者の今村翔吾氏は、2017年のデビュー以降、時代小説の第一線で活躍してきた作家だ。『塞王の楯』で直木賞を受賞し、『イクサガミ』シリーズがNetflixで実写化されるなど、いま、最も新作が待たれている作家のひとりだろう。
今村氏に小説を書く才能があることは疑いようがない。しかし本書で語られる言葉は、驚くほど現実的で、感傷や精神論に寄らない。その語り口は、ビジネスライクとさえ感じられるほどであり、そこに強い説得力がある。
たとえば、長編を年3冊ペースで書くべき理由。本書では、それが努力論や根性論ではなく、出版業界の構造や、書店展開の有利不利、市場での存在感といった観点から説明される。夢ではなく、戦略として「書く量」が語られる点が印象的だ。
今村氏が実際に積み重ねてきたノウハウが惜しみなく開示されている点も、本書の大きな魅力である。テーマの見つけ方、キャラクターの設計、生成AIとの付き合い方など、「作家で食っていく」ために即実践できる知見が並ぶ。
そもそも作家志望でない人が読んでも純粋に、抜群に面白い。
作家はいかにしてプロになるのか、印税収入の実態はどうなっているのか、編集者に重宝される作家はどんな人なのか。普段は知ることのできない業界の内側が、具体的に語られている。知られざる業界内の事情に、好奇心が満たされること間違いなしである。

本書の要点

・作家になるために必要なものを一つ挙げるとすれば、それは読書量だ。
・新人作家が専業作家として生計を立てるには、最低でも年3冊の長編を書く必要がある。
・著者の創作においては、「何を描きたいのか」「何を伝えたいのか」という核を定め、その目的を最も的確に果たせる人物や時代を選び取っていく。テーマの種は、時事ニュースをはじめとする日常の中に潜んでいる。



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