レビュー

「言語化」と「小説」がどのように結びつくのか。ただちに説明できる人はそれほどいないと思われる。

「言語化」はビジネスをはじめとしたさまざまな状況で役立つ汎用的な必須スキルといわれるようになっているが、小説は創作表現のひとつであり、現代日本では娯楽として接している人が多いだろう。しかし小説とは、その作品世界で起こっていることすべてを言語のみを用いて読者にわかるように表現しなければならない形式である。小説の執筆とは、言語化そのものなのだ。
ゆえに、小説のプロフェッショナルは言語化のエキスパートである。直木賞作家として知られる著者・小川哲による本書は、小説の書き方を解説する技術書であると同時に、「人はどのように世界を理解し、他者に伝えているのか」を問い直す思考の書となっている。小説家という立場から、創作を普遍的な認知・抽象化・コミュニケーションの延長として捉える。知らない世界について語るための抽象化と個別化、読者が何を知っているかを前提にした情報設計、「アイデア」ではなく「問い」から書きはじめる姿勢などが、具体的な例とともに語られていく。
要約者は職業小説家であるのだが、その視点からも小説の執筆・汎用的な言語化の双方で、鋭い視点を持った書籍であることを保証したい。

本書の要点

・知らない世界について語るには、既知の世界を抽象化し、別の文脈に個別化する思考が必要である。
・小説は作者の認知を圧縮したものであり、読者がそれを展開して初めて成立する。
・面白さはアイデアから生まれるのではなく、問いに取り組む過程で現れるディテールから生まれる。



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