レビュー

日本が誇るグローバル製薬会社「エーザイ」の歴史を振り返り、特にこの40年間に注力しているアルツハイマー型認知症治療薬の開発に迫った一冊だ。「物語り」の中心にいるのは、内藤晴夫・現エーザイCEO。

ときに果断に物事を判断し、ときに親身に社員により添う、そのリーダーぶりを解き明かした本だともいえる。
開発にまつわるイノベーションから、組織体制の変更、経営理念の刷新、非財務的価値投資の数値化、熱帯病根絶のための無償提供“薬錠”の社会的インパクトの算定まで、内容は多岐にわたる。
特筆すべきは、世界的経営学者で、本書の著者の一人である野中郁次郎(2025年1月に逝去)が開発した「知識創造理論」が、エーザイの経営に採り入れられたことだ。「ヒューマン・ヘルスケア(hhc)」という企業理念が定款に記載され、株主との了解事項になったことは画期的だと言える。
最初のページに掲載された野中の手書きメモが印象深い。“内藤「生き方」の経営”とある。亡くなる直前、おそらく渾身の思いを込めて付箋に書かれたもので、本書のコンセプトを示唆し、タイトルを意識したものとも読める。
本書の著者は野中に加え、野中と親交が深く、共著書もある慶応義塾大学名誉教授の奥村昭博と、野中の弟子筋にあたる一般社団法人野中郁次郎研究所理事の川田英樹。「経営は『生き方』(a way of life)だ」と喝破した野中の経営学がそのまま当てはまる、人間ドラマに満ちたエーザイの物語をお楽しみいただきたい。

本書の要点

・エーザイの3代目社長、内藤晴夫は「製薬会社の顧客は医師」という製薬業界の常識を覆し、「疾病をもつ患者様とそのご家族こそがエーザイの顧客だ」とした。
・野中郁次郎による「知識創造理論」に感銘を受けた内藤は、そのプロセスである「SECIモデル」をエーザイの活動に取り入れた。
・アルツハイマー型認知症の治療薬の開発は、エーザイの研究員・杉本と認知症の母親の会話がきっかけで始まった。

幾度も壁にぶつかりながらもセレンディピティ(偶然の幸運)に恵まれ、ついには製薬業界のブロックバスターとなった。



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