レビュー

美術館で見ることのできる絵画は、基本的には時を超えて受け継がれる「名画」ばかりである。しかし果たしてなぜそれが「名画」なのか、を説明できる人は多くはないだろう。

感情の赴くままに受け止めることが悪いとは思わないが、それだけに終わってしまうのはもったいなくもある。
本書は感覚的に語られがちな絵画を、自分の目で見る方法を教えてくれる。7つの項目に分けて様式(スタイル)に着目することで、色づかい、コントラスト、輪郭、形、筆触などの違いを具体的に捉え、論理的に観察する視点を身につけることができるのだ。さらに西洋絵画史を「理性派/感性派」「シンボル路線/リアル路線」という2つの軸で読み解き、様式の変遷を大きな流れとして把握させる。複雑に見える美術史が、互いに影響し合いながら発展する二重の流れとして理解できる点が本書の大きな魅力である。
また、技法や支持体の変化――テンペラから油彩へ、板からキャンバスへ――が表現そのものを変え、やがて印象派やキュビズムへと連なっていく過程も丁寧に示される。絵画は単なる平面的なイメージではなく、歴史・技術・思想が折り重なった「情報の層」として成り立っていることが見えてくる。
絵画の鑑賞とは必ずしも受け身の体験ではない。そこに織り込まれたコードを読み解く知的営為なのだということを本書は教えてくれる。絵を見る楽しさを一段深いものへと導く入門書である。

本書の要点

・絵の様式は「色使い・明暗・輪郭・形・筆触・主役・構造線」の7要素で判別できる。
・西洋絵画史は「理性派/感性派」と「シンボル路線/リアル路線」が交錯しながら展開してきた。


・テンペラから油彩、板からキャンバスへの転換が、表現の幅と画風の方向性を決定づけた。



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