アカデミー産を含め、多くの若手を成長させながら結果を出してきたトッテナムは、補強ゼロの昨シーズンを経て昨夏、数人の有望株を獲得した。その戦略の背後にいる代理人の影響力とは?
文 結城康平
近年の移籍市場は数人のスーパーエージェントによって“支配”されている。
ピニ・ザハビ。イスラエル出身の彼は、現在76歳でありながらエネルギーを失っていない。過去にはロシアの大富豪ロマン・アブラモビッチのチェルシー買収を助けるなどクラブの売買にも関与。“幻影”の異名を取る謎多き代理人はインタビューを断り続けることでも有名だ。圧倒的なネットワークを武器に「ファシリテーター」として移籍を実現させる手腕に定評があり、間接的に移籍の手助けをすることもある。代理人が別に存在するケースでも、彼が移籍交渉に同席することすら珍しくないという。
長年ポルトで従事した旧友のアンテロ・エンリケが2017年にパリSGのスポーツディレクターに就任(昨年7月に退任)した頃から徐々にフランス方面での影響力を高めると、親密な付き合いを続けるネイマールの移籍を実現。PSGに深く入り込みながら「余剰戦力の売却」をサポートする彼に接近したのが、トッテナムのダニエル・レビィ会長だった。前指揮官マウリシオ・ポチェッティーノとの親交も深いザハビは、セルジュ・オーリエとルーカス・モウラを移籍させたことで、トッテナムの補強戦略に欠かせない存在となる。
https://twitter.com/RomainCG75/status/1119202675164372997PSGのアル・ケライフィ会長(右)らと試合を観戦するピニ・ザハビ
そして昨夏も、タンギ・エンドンベレ(←リヨン)とジオバニ・ロ・チェルソ(←ベティス)獲得の裏で暗躍したと伝えられている。
獲得オペレーションにおいてザハビが裏で手を引いたとされるロ・チェルソ。当初はレンタルだったがこの冬に買取オプションを行使し完全移籍が決まった
フェキルの移籍金が比較的安く抑えられていること(2000万ユーロ程度と報道)も話題になったが、それもエンドンベレをセットにして考えると話が変わってくる。その6000万ユーロ以上を伴う高額移籍を条件に、リヨン側に接触することで移籍金を抑えさせた可能性も考えられる。同時にフェキルの移籍条項には「ベティスが売却した場合は移籍金から2割を支払うこと」や「弟ヤシン・フェキルの移籍」などを盛り込むことで、正式な代理人である父親を口説き落としている。複数の移籍に絡む男だからこそ、そのような調整も不可能ではない。アーセナルが伝統的に強いコネクションを持つフランスに、トッテナムが入り込む手段。それこそが、ザハビなのだ。
Photos: Getty Images

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