バルセロナで主力として活躍し、スペイン代表デビューも飾りながら、試合中の相手との接触で左膝半月板を負傷したアンス・ファティ。手術後も回復具合は思わしくなく、再度の手術を決断したという。

復帰は早くて来季初頭。あの輝きを取り戻すことはできるか。

 昨年11月に左膝半月板を損傷し手術したアンス・ファティの回復具合が思わしくない。『ムンド・デポルティーボ』紙によると、5月6日には再び手術室に向かうことになるという。回復の遅れが噂されていたが、この手術で完全にEURO2020も東京五輪も出場不可能、ということになる。

縫合法で手術をしたが…

 負傷の状況はこうだった。33分、ベティスのDFマンディが後ろからスライディングタックル。ファティは左足が引っ掛かって後ろに残り、膝を捻るようにして崩れ落ちた。ケガに直結するような暴力的なものではなく、マンディにはイエローカードが提示された。

 ファティはグラウンドでの治療後プレーを続けたが、ハーフタイムで交代した。プレーを続行できたこともあって重傷とは思われなかったが、翌日の検査で左膝の内側半月板に亀裂が見つかった。

 半月板というのは大腿骨と脛骨を繋ぐ軟骨で、これがクッションの役割を果たすことで靭帯や骨が守られている。一部損傷であれば、痛みを我慢すればプレーをすることができ、実際、騙し騙しプレーを続けてシーズン終了後に手術をする選手もいる。

将来の大器ファティの場合、無理をさせることはまったくないので、負傷の翌々日となる11月19日、すぐに出術に踏み切った。

 半月板損傷の手術には2種類がある。1つは保守的な療法で、亀裂の入った部分を糸で縫合する方法。もう1つは損傷部分を切除する方法。いずれもダメージを最小限にするために、関節用の内視鏡を使って行われる。

 ファティの場合は18歳と若くて回復力があるため、前者の縫合法が採用された。縫合によって軟骨同士がくっつけば、まるで負傷がなかったかのようなレベルまで回復できる。

 例えばエトーはバルセロナ時代の2006年9月に半月板の縫合手術を行い、復帰に4カ月間かかったものの完全復活。末永く輝かしいキャリアを築いたのはご存じの通りだ。診断と執刀を担当した名医ラモン・クガットとファティが縫合を選択したのは、当然の判断だと言える。

練習場には一向に現れず

 ただ、縫合にはリスクがある。それは亀裂部分がくっつかない場合があること。半月板には血管が通っている部分と通っていない部分があり、通っていれば再生力はあるが、通っていなければ再生力がなく、縫合の成功率は4割ほどとされる。

 ファティの場合は糸で縛った部分がくっつかず亀裂が入ったままで、1月下旬にジムでのリハビリを開始すると膝が腫れ上がり、痛みが出るということが起こった。

 この再発で復帰のスケジュールは大幅に狂うことになる。11月の出術時には全治4カ月の診断で、3月のUEFAチャンピオンズリーグ、パリ・サンジェルマン戦の第2レグには戻って来られると言われており、2月にはボールを蹴り始められる見込みだった。

 それが練習場に一向に現れないことで、術後の回復がうまくいっていないという噂が立ち始めた。

 だが、バルセロナは沈黙。1月末と3月に追加の内視鏡手術が行われた、と一部報道に出ていたが、それに対して公式にはイエスもノーもなかった。

バルセロナが沈黙する中…ファティ、再度の手術で復帰が先延ばしへ

メッシ(左端)らと試合を見守るファティ(右端)。練習に復帰できない状況が続いている

復帰は来シーズン初めか

 そんな矢先に今回、新たな手術の報が出た。スクープした『ムンド・デポルティーボ』によると、今回は損傷部分の切除に踏み切るという。切除部分が最低限であればプレーは問題なくできる。輝かしい未来が約束されているファティのキャリアが中断することはない。

 が、一部であれクッションがなくなることで、中長期的には骨や腱に痛みが出るなどの悪影響が出ることがある、とされる。

 執刀に当たるのはクガットではなく別の医師で、クリスティアーノ・ロナウドの信頼も厚いポルトガル代表担当のホセ・カルロス・ノローニャ医師だと同紙は報じている。

執刀医の他、フランスとスペインの別の2人の医師にもセカンドオピニオン、サードオピニオンを求めた上での切除の決断だったという。

 ファティにとって不幸中の幸いは、リハビリ期間が半月板外側に比べてより短くて済む内側の損傷であること。一般的に全治2カ月程度とされているため、復帰は来シーズン初めと見られている。

 手術の場所と時間が特定されているので、ファティ本人の姿がカメラに捉えられるなどすれば、クラブ側から今度こそ正式に具体的な手術内容とリハビリ期間が発表されるかもしれない。

手術の成功を祈るばかり

 最後に、ファティについて個人的な感想を書いておく。衝撃的だったのは、普通に繰り出しているかに見えるフェイントにリーガのベテラン勢がコロコロ簡単に引っ掛かっていたこと。速いように見えないのに、ドリブルがひと伸びしてマーカーが置いていかれる。そのギャップこそが凄さだと感じた。

 ベティス戦の負傷の瞬間も見ていたが、普通なら止められるのにひと伸びしたせいで、後ろから足を引っ掛けられる形になった。

 負傷の2カ月前、昨年9月にはフル代表デビュー。ルイス・エンリケ監督にはアンダー代表に置いておくつもりはなく、得点力不足に苦しむ代表の隠し玉としてEURO2020に連れて行くつもりだったのだと思う。

 彼が出れば代表の行方は間違いなく変わっていただろう。

18歳にしてそれだけの存在感、ベテランを手玉に取れるだけのスケール感がある。

 今はただ、6日の手術の成功を祈るばかりだ。

バルセロナが沈黙する中…ファティ、再度の手術で復帰が先延ばしへ

昨年9月にはA代表デビューも飾っており、順当であればEURO2020出場が濃厚だった


Photos: Getty Images

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