摘発されたマネーロンダリング(資金洗浄)組織は、「ルフィ」をはじめとする犯罪グループの「金庫番」の役割を担っていた。


 警視庁と愛知県警の合同捜査本部は21日、架空請求の手口で現金をだまし取ったとして、マネロン組織の幹部、樋口拓也(37)、相田栄幸(33)、福井かおり(48)ら3容疑者を詐欺の疑いで逮捕した。

福井は5回目の逮捕。


 樋口容疑者らのマネロン組織は、一連の広域強盗事件を起こした「ルフィグループ」など、複数の犯罪組織から資金洗浄を請け負い、預かった金を出どころが分からないように洗浄して還流していた。


 その手口はこうだ。


「樋口らは犯罪グループが被害者からだまし取った億単位の金を毎月、複数の口座に振り込ませていた。その金を海外の取引所で暗号資産に両替し、インド洋の島国セーシェルの取引所を経由させてから再び数回に分けて樋口に戻し、暗号資産として管理していた。複数の送金・取引を頻繁に行い、送金先や取引相手の匿名性を高める『ミキシング』と呼ばれる手法や、出どころの異なる暗号資産を混在させるなど、複雑な資金移動を繰り返して追跡を困難にしていた」(捜査事情通)


 ロンダリングした暗号資産は、福井容疑者が現金化して運搬役の相田容疑者が受け取り、樋口容疑者が以前、暮らしていた都内の自宅に届けていた。樋口容疑者宅には犯罪グループから洗浄を依頼された詐取金に加え、ルフィグループが強盗事件で奪った被害金の一部約1000万円も運び込まれていた。


 樋口容疑者らのマネロン組織は資金洗浄のほか、特殊詐欺やFX投資詐欺にも関わり、少なくとも11億円相当の暗号資産を現金化していたことが確認されている。


 警察庁サイバー特別捜査部と愛知県警が特殊詐欺事件の金の流れを分析。だまし取られた現金が海外の取引所で暗号資産に交換され、名古屋市の31歳の男の口座に入金されていたことを突き止めた。これをきっかけにマネロン組織の存在が明らかになった。


「31歳の男の口座には2020年から2年8カ月の間に、出どころが分からず、資金洗浄されたとみられる約33億円もの出入金があった。

その口座を管理しながら、特殊詐欺事件に関わっていたのが、昨年5月に愛知県警に逮捕され、再逮捕された福井かおりです。福井自身も海外の暗号資産の大手取引所に口座を開設。そこで高齢者などからだまし取った犯罪収益金約1億7500万円分のビットコインを別の暗号資産に交換して暗号資産管理アプリに移し、隠していた」(前出の捜査事情通)


 複雑な暗号資産の動きを解明したことで、犯罪グループの実態が明らかになる。


編集部おすすめ