やはりヤクザ組織が裏で糸を引いていた。


 昨年5月、大阪市中央区の路上で高級腕時計ロレックス172本(2億8374万円相当)が配送中の軽ワゴン車ごと盗まれた事件。

大阪府警捜査3課は1日までに、指示役とみられる山口組系弘道会傘下組織の幹部で中国籍の丁永剛容疑者(50)を窃盗容疑で逮捕・送検した。


 犯行グループはドライバーが車から離れたわずか3分の隙に、ロレックス172本が入ったジュラルミンケース5個を無施錠の車ごと強奪。犯行車両とともに猛スピードで現場から立ち去り、途中で別の車両に移し替え、逃亡を続けていた。


 事件発生から約5カ月後の昨年10月、府警はワゴン車を盗んだ実行役の弘道会系組員と、山口組と友好関係にある団体の50代の男2人を逮捕。その後、事件を計画した指示役と実行役のリーダー2人の身柄を確保した。


「2人のリーダーはこれまで自動車盗や車上狙いを繰り返してきた窃盗のプロですが、最近は金に困り生活保護をもらっていた。丁は直接犯行には加担せず、<こんなふうにやったらええんちゃうか>と2人に指南していた。盗まれた172本のうち現時点で見つかっているのは9本です。シリアルナンバーが明らかになっていることから、国内での転売は難しい。盗品であることを承知の上で売買したり、それなりの販売ルートがあるのではないか。すでに海外に持ち出された可能性が高い」(捜査事情通)


■元神戸山口組系と山口組系がタッグ


 今年1月、神戸山口組の中核組織だった「山健組」傘下組織の50代幹部の男が、都内の店で盗品のロレックス1本を230万円で販売し、逮捕された(後に不起訴処分)。今回の事件の逮捕者は計15人に上り、うち4人が弘道会系、山健組系、他団体の暴力団関係者だった。


「丁自身も、もともと神戸山口組傘下の組織出身です。山口組と激しく対立していた2016年、大阪府門真市の弘道会系の組事務所に盗難車のトラックでバックで突っ込み、玄関や壁を破壊した。その後、弘道会傘下組織の野内組に移籍し、幹部となった。弘道会出身の山口組の高山清司若頭は上納金の取り立てが厳しく、金に困ってラーメン店を経営していた直参もいた。高山若頭のやり方に不満を抱いた直参が次々離脱し、分裂騒動が勃発。丁らもシノギに困り、かつての敵味方など関係なく、利害が一致したのではないか」(前出の捜査事情通)


 1992年に約2万3000人だった山口組の構成員は、昨年末の時点で3300人まで減少。高齢化が進み、警察の取り締まりも強化され、渡世稼業は苦しくなる一方だ。


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