今年最大の邦画話題作といわれているのが、6日に公開された「国宝」(東宝)だ。2021年NHK大河ドラマ「青天を衝け」の主演を務めた吉沢亮(31)と、現在放送中の大河「べらぼう~蔦重栄華乃夢噺~」に主演する横浜流星(28)のダブル主演作。

吉沢は任侠の世界に生まれ、後に上方歌舞伎の名門当主に引き取られ、女形歌舞伎役者となる喜久雄を演じる。横浜が演じるのは、当主の実の息子であり、生まれた瞬間から将来を約束された歌舞伎界の御曹司・俊介。日本の映画界は「国宝」に期待度MAXなのだ。


「『国宝』は先月開催されたカンヌ国際映画祭の監督週間に上映され、現地映画関係者の間で大きな話題になりました。東宝の最終目標はズバリ、来年春開催のアカデミー賞“国際長編映画賞”の最優秀作品賞と言われています」(映画関係者)


 これが現実になれば、当然レッドカーペットを歩くであろう吉沢と横浜も、ハリウッドのエージェントから引く手あまたになると予想される。



■「あんぱん」効果の強烈な追い風


 向かうところ敵なし、と思われる「国宝」だが、同じ公開日に思わぬ刺客となる可能性のある強力な邦画が潜んでいる。原菜乃華(21)主演の「見える子ちゃん」だ。原作となる漫画単行本は、2024年10月の時点で累計発行部数が300万部を突破している。


「青春ホラーコメディーという新しいジャンルを支持しているのは、あまり1人では映画館に足を運ばず、友人や恋人、家族で観賞するティーンエージャーです。これは、興行収入が60億円を超えた『はたらく細胞』と同じ行動習性を持つ観客が見る作品です」(前出の映画関係者)


 キャスティングも予算も天と地ほど違う新感覚ホラーが「国宝」に勝つとはにわかに信じられない気もするが、“まさか”は十分あり得るという。


「追い風になっているのは、主演の原の、NHK連続テレビ小説『あんぱん』での好演です。原は、22年11月に公開され、約149.4億円の興収を記録したアニメ映画『すずめの戸締まり』のヒロインの声が有名です。

『あんぱん』ではヒロイン3姉妹の末っ子“朝田メイコ”役を演じ、ティーンエージだけでなく、中高年層にもファン層を広げています。さらに『見える子~』にはSixTONESの京本大我も出演。高額予算をつぎ込んで製作された重厚な作品を見るより、原が命名した“劇場版お化け屋敷”をサラッと楽しみたいと考える観客が少なくないとみられているのです」(前出の映画関係者)



今も尾を引く吉沢亮の泥酔報道

 実際、「あんぱん」効果は絶大で、原は23年上半期にCM契約がわずか1本だったが、今年後半には新規契約クライアントが2桁になるのではとも言われている。


「公開を半年後に控えた今年の年明け早々に公になった、吉沢の“泥酔住居侵入報道”は多くのファンを失望させ、『国宝』の公開さえ危ぶまれました。酒に酔って、トイレがしたかったからと隣人の部屋に無断で入ったなんて、吉沢のイメージを崩壊させたと言っても過言ではないでしょう。横浜も、放送中の『べらぼう~』の視聴率から推察されるように、ファンが見たい彼のイメージは、時代劇や堅苦しく重たい芸術映画作品ではない。素晴らしい作品に間違いないのでしょうが、果たして興行的大成功に結びつくか……」(芸能関係者)


 日本の伝統芸能・歌舞伎の世界を描いた“壮大な芸道映画”と、“青春ホラーコメディー”の対決が始まった。公開直後の観客動員と興収は「国宝」が今のところ上回っているが、「見える子~」はどこまで肉迫できるか。


(芋澤貞雄/芸能ジャーナリスト)


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