中国残留孤児2世を中心とした反社会的集団「チャイニーズドラゴン」が仲介役となり、日本のヤクザと香港マフィアが盃を交わしていた。


 暴力団員の身分を隠して山梨県のホテルに宿泊したとして、警視庁暴力団対策課は、指定暴力団住吉会系「二代目武州伊勢野一家」総長の田島和幸(53)、チャイニーズドラゴン(チャイドラ)幹部で東京・赤羽グループトップの白井宇太郎(53)と弟の加次郎(51)の3容疑者を含む男5人を詐欺の疑いで逮捕した。


 2023年3月、田島容疑者らは暴力団員であることを隠し、反社組織の宿泊を禁止しているホテルに宿泊予約を入れ、館内のレストランを借り切った。田島容疑者は宇太郎容疑者を後見人として、同盟関係を結ぶ儀式「盃事」を開催。香港を拠点とする中国人マフィア「14K」の幹部ら複数人を含む約30人が参加し、加次郎容疑者が通訳を務め、その場で両者が連携を約束する盃を交わした。


「赤羽グループトップの宇太郎は、埼玉県草加市をシマとする田島と親交があり、弟の加次郎を通じて14K幹部との間を取り持った。お互い情報交換を行い、連携を機に勢力拡大と日中両国進出の取っ掛かりにする狙いがあったのではないか。大物ヤクザが反社集団に仲介を頼むのだから、チャイドラがそれだけ裏社会で力をつけていたということ。この一件でヤクザとマフィアに貸しをつくった」(捜査事情通)


 事件が明らかになったきっかけは、スマホに残された1本の動画だった。23年9月、チャイドラ赤羽グループが東京・渋谷区の表参道のアップル直営店で、iPhone15を買い占めようとして別のグループとトラブルになった。警視庁は昨年9月、メンバーの男女7人を逮捕。そのうちの1人が加次郎だった。押収したスマホを解析した結果、兄弟が両者を仲介している映像が見つかった。


「チャイドラには複数のグループがあり、表参道店のiPhoneは前年まで東京・王子グループが買い占めていたが、主要メンバーが赤羽に移り、大量に購入しようとしてトラブルになった。

iPhoneは中国の富裕層に人気があり、当時、世界的に在庫不足だった新製品が日本では安く購入できた。グループにとって重要なシノギだった」(捜査事情通)


■ミャンマーの特殊詐欺にも関与


 チャイドラは中国本土のマフィアとも密接な関係にあるといわれる。今年2月、ミャンマーの国境地帯で日本人を含む1万人以上の外国人が監禁され、特殊詐欺を強要されていることが明らかになった。中国人率いる巨大犯罪組織から依頼を受け、日本人のかけ子を集めるリクルーター役や現地の指示役をチャイドラの一味が担っているとみられている。


 シノギに困り、ヤクザが激減する中、チャイドラは秘匿性の高い通信アプリや暗号資産(仮想通貨)など最新ツールを駆使し、外国の犯罪組織と対等な関係を築き、莫大な犯罪収益を上げ、勢力を拡大したようだ。


編集部おすすめ