安倍元首相を銃撃した山上徹也被告(45)の初公判がおよそ1カ月後に迫る中、韓国で大きな動きがあった。
前政権との癒着疑惑をめぐり、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)のトップの韓鶴子総裁(82)が17日、捜査当局の取り調べを受けたのだ。
韓総裁をめぐる容疑は、政治資金法違反や請託禁止法違反など。尹錫悦前大統領が僅差で勝った2022年3月の大統領選をめぐり、信者を動員してし尹氏に投票させる見返りとして、ODAなどの政府支援を要請したという。
その過程で、尹氏側近の国会議員の権性東容疑者=政治資金法違反の疑いで17日未明に逮捕=に1億ウオン(約1060万円)、尹夫人の金建希被告=あっせん収賄罪などで起訴=に高額ネックレスなどを渡したとみられている。
尹夫妻の不正を捜査する特別検察官は7月中旬、ソウル郊外の教団本部を家宅捜索。7月下旬には教団元幹部の男=請託禁止法違反罪などで起訴=を贈賄の実行役とみて逮捕した。韓総裁は15日までに3度も出頭を求められたが、心臓手術後の経過が思わしくないと拒否。一方的に日程を決めて事情聴取に応じ、用意された50ページ超の質問票に基づく調べに黙秘することなく応じているという。
現地で取材する国際ジャーナリストの太刀川正樹氏はこう言う。
「共犯と目される権議員が逮捕され、身柄を取られることを恐れた韓氏は渋々聴取に応じたのでしょうが、側近はすでに起訴された。韓氏の立件も不可避でしょう。ただ、統一教会問題もしかりで、特別検察による一連の捜査は政局絡み。政敵潰しを徹底する李在明大統領のさじ加減ひとつと言っても過言ではありません。統一教会は韓国社会でも『サイビ』(カルト)とみなされているものの、日本ほど異端視されておらず、親族が信者の国会議員も少なからずいる。KCIA時代には国際勝共連合を立ち上げて朴正煕政権に貢献してもいる。『怪物独裁』と揶揄される李氏は、損得を見極めようとしているところではないか」
自民党が再起を図る総裁選に突入しようとする中、凋落の引き金となったカルトが火だるまになる因縁。「ポスト石破」が実態解明しなければ、いつまでも蒸し返される。「関係断絶」なんて誰も信じちゃいない。
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