韓国の尹錫悦前大統領をめぐる一連の疑惑に関連し、旧統一教会(現・世界平和統一家庭連合)の韓鶴子総裁(82)が、23日の未明、逮捕された。便宜を図ってもらう目的で尹前政権側に金品を提供した政治資金法違反などの容疑だ。

文鮮明教祖の死後、教団に君臨する夫人が塀の向こうへ引っ張られ、日韓の信者に動揺が広がる。折しも、四半世紀にわたってベッタリしてきた自民党は総裁選(10月4日投開票)のまっただ中だ。


 韓氏の容疑は政界との癒着で、日本のそれと同じ構図。元教団幹部らと共謀し、尹側近の国会議員=政治資金法違反容疑で逮捕=に1億ウオン(約1060万円)を渡したほか、尹夫人の金建希被告=あっせん収賄罪などで起訴=に高額ネックレスなどを贈った疑いだ。カネと票を差し出し、政府に支援を依頼したとみられている。


 尹夫妻の疑惑を捜査する特別検察官チームは証拠隠滅の恐れがあるとして韓氏の身柄を取ったが、本人は容疑を否認。「政治に関心はない」とうそぶいているという。世界の要人を招いてはシンポジウムを開催し、日本の教団に対する解散命令請求に動いた岸田前首相をめぐっては「岸田をここに呼びつけて教育しなさい」と幹部に指示したのは記憶のかなたなのか。韓氏が収容されたソウル近郊の拘置所前には夜明け前から信者が多数押し寄せ、早期釈放を求めて抗議の声を上げている。


 旧統一教会問題を長年追及するジャーナリストの鈴木エイト氏はこう言う。


「韓氏は特検の調べに対し、〈私は『独生女』(天の一人娘)だ〉〈一般社会の法律では裁けない〉などと主張し、徹底抗戦の構えです。一方、教団内の権力争いも激化。

韓氏は今年4月、孫にあたる長男の息子2人を後継指名しましたが、立件を免れた古参幹部が支配を強めており、内ゲバの様相です。日本側は情報収集が追いつかず、混乱している。気になるのが、韓氏が信者に〈私のために祈らないで〉と呼びかけたと報じられたこと。信者への気遣いなのか、あるいは奪還を暗に指示したものなのか。意味深です。日本への波及が懸念されます」


■自民党総裁選では今年も“高市推し”


 総裁選をめぐり、信者は昨年、高市早苗前経済安保相を推していた。


「今年も教団として統一見解は出していないものの、信者は変わらず、『高市一択』です。安倍元首相の路線継承にとどまらず、スパイ防止法の制定を掲げるなど、政策の親和性が高い」(鈴木エイト氏)


 日本も捜査のメスを入れなければ、いつまで経っても政治への介入を疑われる。


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 参政党・神谷宗幣代表の主張は旧統一教会とソックリ? ●関連記事【もっと読む】『参政党・神谷宗幣代表 にじむ旧統一教会への共鳴…「文化的マルクス主義」に強いこだわり』で詳報している。


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