【あの人は今こうしている】
鶴見虹子さん
(元体操選手/33歳)
◇ ◇ ◇
10月19日から始まる世界体操競技選手権。男子はメダルを期待されるが、女子はどうなのか。
鶴見さんに会ったのは、大江戸線牛込柳町駅から徒歩2分の「鶴見虹子体操School」。
「3年前にここをオープンし、会員は100人ちょっと。今は千駄ヶ谷と東銀座にも教室があり、全部で200人ほどに通っていただいています。社員は4人。ほかに、現役大学生に講師として入ってもらっています」
手広くビジネスをやっているようだ。
「チラシのポスティングやネット検索で上位に上がるよう広告を出したりして会員を増やしました。オープン半年で黒字になりましたよ」
なかなかヤリ手だ。教室はエリート対象かと思えば、そうではないという。
「運動神経を良くしたいとか、お受験のためという2歳から小学生までのお子さんが多いですね。他の教室と違うところは、スピーチレッスンを取り入れているところ。
■「中学に上がる2年後にデビューさせる予定です」
え、アイドル?
「教室に来た会員から女子4人をスカウトし、体操のほかダンスや歌、語学のレッスンを週6で行っています。この11月に銀座で非公開のお披露目ライブをする予定。1期生の2人はいま小5なので、中学に上がる2年後にデビューさせる予定です」
そりゃまた力の入った計画だ。
■五輪に出ても食べていけないのが体操界の現実。なんとか盛り上げたくて
「体操をやっても金銭的に報われなかった経験から考案しました。私は体操を18年やって五輪にもいったのに、引退後に就職したベンチャー企業のお給料が少なくて……。『こんなことなら、勉強ガンバって東大に入ったほうが良かった』と思いました。体操をやった先の未来が明るくないと、体操をやろうという人は増えない。私は体操界の裾野を広げ、盛り上げたい。そのために歌って踊れる体操選手兼アイドルを育成し、彼女らがハネれば金銭的にも報われ、体操に夢をもってもらえると考えたんです。失敗したら? ここまで投資して、失敗なんて許されません(笑)!」
■自身も引退後は居酒屋や宅配ピザ、銀座のクラブで働いたことも
資金はどこから?
「ある大企業の社長からお借りしました。
大学や体操協会で指導者になる道もあったろう。
「引退してすぐは別のことをやってみたくて。友人に誘われて入ったベンチャー企業では、体操教室を起ち上げる仕事だったのでビジネスを学べた。その経験が今の教室を始めるのに役立ちました」
■結婚相談所に登録して婚活中。「会った男性はまだ2人だけ」
仕事で充実しているようだが、プライベートは?
「友だちがやっている結婚相談所で婚活しています。といっても、この2カ月で会ったのはたった2人。忙しすぎて(笑)。
19日から始まる世界選手権はどう見ているのか。
「どんな選手がいるのか、見に行く時間がないのでわかりません。今は規律が緩いみたいですね。私のときは厳しかった。体重管理のために、中学時代のお弁当はコンニャク麺とサラダだけ。牛丼など食べたことがなく、引退して初めてすき家で食べたときは、おいし過ぎて感動し、『毎日まかないで食べたい!』と3カ月すき家でバイトしたほどです(笑)」
都内で1人暮らしだ。
(取材・文=中野裕子)
▽鶴見虹子(つるみ・こうこ) 1992年9月28日生まれ。埼玉出身。5歳で体操を始め、小6から名門・朝日生命体操クラブ所属。2006年から史上最多の全日本選手権個人総合6連覇。北京とロンドンの五輪に出場。