テレビ局に代わり勝手に「情報開示」】


 見ました見ました。いやー、見た瞬間に「あれ? これやばくないか?」と、背筋がゾワゾワッとしましたよ。

中国出身の女優・高陽子さんが発言した時の感じを見ると、たぶん「東国原さんとの言い争いモード」に入っているのは確かで、「中国人代表」的な立場で出演しているのも意識していたでしょうから、東さんの「中国の支配下になります」という発言に対して、ジョークも半分入った感じで「いいじゃないですか!」と言い放ってしまったのでしょうけどね。ちょっと目の色がマジっぽいのがまた、良くなかったですよね。ぶっちゃけ視聴者に「怖い」と感じさせたと思います。


 もし自分があの番組のプロデューサーだったらどうするかな…と考えると、まあ悩ましいところですが、たぶんカットしたでしょうね。理由は出演者を守るためです。「売り言葉に買い言葉」的な流れで、中国人出演者が挑発的な発言をしてしまったわけですから、切り取られてネットで炎上するのは火をみるより明らかですからね。糾弾されて日本で芸能活動しにくくなるのは容易に想像できます。番組でお願いして、中国人代表という立ち位置をさせたわけですから、そこは守ってあげるのがテレビマンとして当然ではないかと思います。


■言い争いを楽しむ番組だが……


 そもそも「TVタックル」という題名が示すように、あの番組は「言い争ってエキサイトしているのをプロレスのように楽しむ」のがコンセプトの番組だと私は思います。高さんは言ってみれば、テレビ朝日によって「言い争いのリングに、ヒールのレスラーとして上げられた」わけですよ。いまの日本社会では中国政府の評判は最悪に近いわけで、中国人代表として語るというのはアウェイ中のアウェイで、「危険な仕事」なわけです。


 そういう意味では彼女の「いいじゃないですか」という発言は、番組側にとっては「言論プロレスを盛り上げる、ヒールの最高にナイスなファイト」とも言えるわけです。

きっとスタッフは「オイシイ」と思ったでしょう。だから多分カットしないでそのまま放送したんじゃないかな、と想像できます。テレビ的にはある意味「それが正解」だとも思いますよ。


 でもねえ…やっぱり「大ケガ」をしそうなら、守ってあげないと。いくら言論プロレス番組とはいえ、ね。それに最近だんだんそういう「お約束ファイト」みたいなのは通用しない社会になってますからね。やっぱり、そういう世相を考えると、ちょっと「優しくない編集」だったな、と言わざるを得ません。


(鎮目博道/テレビプロデューサー、コラムニスト、顔ハメ旅人)


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 中継に入ったカメラマンの“暴言”が問題に。●関連記事【こちらも読む】『テレビ中継映像に「支持率を下げてやる」の音声が入り時事通信社が謝罪…なぜあんな発言をするの?』では、メディアの取材姿勢について解説しています。


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