田村亮(タレント)

 釣りにハマった最初の記憶は、親と行ったキス釣りです。両親の実家が長崎の有明町(現島原市)っていう港町で、親父も釣りが好きで、オカンの実家も漁師さんでした。


 小学校低学年の頃には、もう遊びの一環として、自転車に釣り道具を載せて、近くの川や池へ友達と一緒に行くのが日課でした。モロコとかフナとか。ブルーギルやブラックバスを狙ったりもしましたね。


 その後、高校くらいから一度釣りから離れたんですが、東京に出てきて20代半ばにまたやり始めたんです。最初はバスを釣っていたんですが、移動に時間がかかってなかなか続けられない。そんなとき出合ったのがシーバスです。


 夜の東京湾なら、仕事が終わった後でも行ける。お台場や有明、フジテレビの目の前でも釣れたんですよ。ロケ終わりに仲間と3時間ほど竿を出して、そのまま次の日の仕事にも行ける。これが自分の生活リズムにピタッとはまりました。


 しかも魚体がカッコいい。50~60センチでも迫力あるし、写真映えする。

上州屋に写真を飾ってもらったり、釣り仲間とルアー情報を交換したり。気がつけばプロのアングラーの人たちともつながって、本格的にシーバスの世界に入り込んでいきましたね。



東京湾で30年近くやってると温暖化の変化も感じる

 釣りの醍醐味は、やっぱり“自然の気配を感じること”でしょうかね。風、潮、光、ベイトフィッシュ(エサとなる小魚)、季節。東京湾で30年近くやってると、温暖化の変化も感じます。南方系の魚が入ってきたり、タチウオの時期がずれたりね。


 今までいろんな釣りをしてきましたが、忘れられないのは、知床でのカラフトマス釣りです。世界遺産の海で船から下ろされ、砂利浜でロッドを振るんですけど……そこにはヒグマがいるんですよ。控えの小屋の扉が開いてたらクマが入った形跡だってことで、同行してくれた人が石をドンドン投げつけて確認する。「中にいたら危ないぞ」って。


 実際に釣っている最中も、いつクマが来るか分からないから、船は近くで待機しています。あるとき本当にクマが現れて、慌てて船に逃げ込みました。


 クマはサケやマスを豪快に捕まえて、手で押さえ込んでガブリ。映像でしか見たことのない光景を、すぐ近くで目の当たりにしました。あの緊張感と迫力は一生忘れませんね。



ルアー選びは物語選び

 釣果で言ったら、やっぱり高知で釣ったアカメですね。「釣りキチ三平」にも出てきますが、アカメはめちゃくちゃ希少でまさに幻の魚。80センチ台を釣ったんですけど、それでもうれしくて興奮しました。赤く光る目に睨まれると、体が震えるんですよ。シーバスも魅力的ですけど、アカメはまた別格ですね。あの時の手応え、重み、引きは今も腕に残ってます。いつか、もっと大きなアカメを狙いたいですね。


 1メートル超えのアカメはロマンですからね。エサ釣りで釣れることも多いんですけど、僕はルアーにこだわりたい。

僕がルアーにこだわるのは“自分で選び、自分で動かし、自分で食わせる”から。誰かの答えを待たず、まずは自分で一投する。


 ルアー選びは、単なる道具選びじゃなくて、自分の物語選びなんです。高知でアカメを取ったこのビッグベイトは、今でもお守りですよ。 (構成=平川隆一/日刊ゲンダイ)


▽田村亮(たむら・りょう) 1972年、大阪府出身。ことし6月「ロンドンブーツ1号2号」を解散。「田村亮の釣りならまかせろ!」(テレビ埼玉ほか)レギュラー出演中。近年は、ラリーにもハマっており、トヨタイムズの富川悠太と一緒にたびたび大会に参戦している。


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