ピースメーカー(平和の構築者)を自称するトランプ米大統領がキナくさい動きを見せている。中国の習近平国家主席との米中首脳会談に臨む直前、突如として「核実験の再開」を宣言した。


 30日、韓国・釜山の金海国際空港で行われた米中首脳会談は、貿易を巡る対立激化が懸念されたものの、ひとまず問題解決に向けて合意。約6年ぶりの直接協議で習は「中国の発展は『米国を再び偉大にする』という米国のビジョンと矛盾しない」と語り、トランプ大統領は会談後、「大成功だった」と振り返った。会談時間は当初の予定よりも長い1時間40分に及んだ。


 和やかムードだったようだが、額面通りには受け取れない。トランプ大統領は会談に向かう大統領専用ヘリコプター「マリーンワン」に搭乗中、何の前触れもなく自身のSNSで〈他国の核実験計画を踏まえ、戦争省(国防総省)に対し、同等の核実験を開始するよう指示した〉〈このプロセスは直ちに始める〉と宣言。米国に次いで核兵器を保有するロシア、中国を念頭に〈本当は(核実験を)やりたくなかったが、選択の余地はない〉と強調した。


 トランプ大統領は会談後、記者団に実験場について「後で決める」と表明。核爆発を伴う実験を再開すれば、33年ぶりとなる。ただ、米シンクタンク「軍備管理協会」のダリル・キンボール会長によれば、かつて爆発実験が行われていたネバダ実験場で再開しようにも「少なくとも3年を要する」というから、トランプ大統領の本気度は不明だ。


 それにしても、なぜこのタイミングで「核実験再開」をブチ上げたのか。上智大教授の前嶋和弘氏(現代米国政治)が言う。


「本当に実験するかどうかはともかく、トランプ氏は中国の核軍拡を警戒しています。

あえて首脳会談の直前に発表することでプレッシャーをかけたのでしょう。トランプ氏の言う平和は『力による平和』であり、むしろひと昔前の核軍拡競争の時代へと逆戻りしかねません。米国が核実験を再開することで、他の核保有国にも実験の口実を与えることになります」


■ノーベル平和賞推薦は撤回必至


 そんなトランプ大統領に、高市はノーベル平和賞の推薦を出すつもりだ。昨年、日本被団協が「核なき世界の実現への努力」を認められてノーベル平和賞を受賞したのに、核実験をチラつかせるトランプ大統領に媚びて被団協の功績に泥を塗るつもりか。


「ノーベル賞への推薦が建前であっても、そもそも軽々に言うべきではありませんでした。日本政府は『核実験再開』発言にノーコメントですが、それでいいのでしょうか。唯一の被爆国として明確に核実験反対の意思表示をしなければ、国際社会に『日本も核を持つつもりなのか』と誤ったメッセージを与えかねません」(前嶋和弘氏)


 早速、ロシアは「もしある国が核実験のモラトリアム(一時停止)から離脱すれば、それに応じて行動する」(ペスコフ大統領報道官)と反応している。平和はますます遠のくばかりだ。


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 そんなトランプ大統領に媚びる高市首相のやり方は、安倍元首相そのものだ。関連記事【もっと読む】などで詳しく報じている。


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