【あの頃、テレビドラマは熱かった】#13


 「空から降る一億の星」
 (2002年/フジテレビ系)


  ◇  ◇  ◇


 日韓共催のサッカーW杯が熱かった2002年。この年最大のヒットとなった連ドラは、W杯フィーバーのさなかである4月クールに放送されたフジテレビ系月9「空から降る一億の星」だ。


 00年の「ビューティフルライフ」(TBS系)で32.3%、01年の「HERO」(フジ系)で34.3%と、連ドラの平均視聴率として驚異的な数字を連発していた“連ドラキング”木村拓哉が、“お笑い怪獣”明石家さんまとダブル主演。そして脚本はキムタク主演作と相性抜群の“恋愛の神様”北川悦吏子。当時もし生成AIがあったら、コンマ1秒で提案してきそうな“最高に数字の取れる座組み”である。


 でも、この組み合わせでラブコメではなく、サスペンスにするなんて、AIには思いつくまい。しかも、深津絵里井川遥柴咲コウがキムタクをめぐる重要な役として登場するという、月9ならではのぜいたくなつくり。どうだ、人間サマは。


 で、そんなぜいたくなラブサスペンスはサッカー熱など関係なく視聴者のハートを掴んでいくのだが、全話見た後に僕が思ったのは、このドラマのキモはW杯目前の5月13日に放送された第5話だということ。


 キムタクを思うあまり情緒不安定になる柴咲コウが凄かった。病院での半狂乱ぶりからの、なだめるさんまに「1番や2番じゃなくてもいい、100番目でもいい……」と訴えた場面は、まだ20歳とは思えない迫真の演技。そして、さんまの妹役でキムタクに引かれていく深津絵里は、この回のラストでキムタクと顔面10センチに。指でキムタクの唇をまさぐり、目を閉じて求める演技は「30歳を目前にしたフカッちゃん」の持つ妖艶さを見せつけた。


 ちなみに、この回のサブタイトルである「死の口づけ」。

この回では誰も死んでいないのに“死”をつけたのは、全話見ないと分からない。中盤にそんなサブタイつけちゃうところも、すごいだろ(と、AIに言っている)。


 でも、当時の僕の正直な感想をぶっちゃけると、「これ、昭和の“赤いシリーズ”じゃん」。キムタクが三浦友和で、フカッちゃんが山口百恵で、さんまが石立鉄男宇津井健で……みたいな。熱心なファンの方、ごめんなさい。


 それはともかく、このぜいたくなラブサスペンスは主に女性週刊誌の記事で盛り上がり、最終回の視聴率はこの年の連ドラ最高の27%。この数字は当時としても凄いんだけど、“キング”と“怪獣”と“神様”が組んでも30%超えならず。いや、そりゃ50%超えを連発していたW杯の時期だもの、しゃーないか。


(テレビコラムニスト・亀井徳明)


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