歌手のライブチケットは1万円以上が当たり前になっている。そんな時代の中、さらに金額を上積みして、付加価値を売るアーティストもいる。

来年3月からアコースティック・ライブツアーを行うGACKTは1万円の指定席のほかに、3万円のプラチナム指定席、6万円のダイヤモンド指定席を販売している。


「“ダイヤモンド”は10列目以内の席の確約、限定プレゼント、終演後のGACKTたちとの直接交流という特典があります。ファンにとって“神”のようなGACKTに会えれば、一生の思い出になる。それを考えれば、安いという人もいるかもしれません」(芸能関係者)


 今年3月に東京ドーム公演を行ったLUNA SEAは5万5000円のSLAVE VIPシートを販売。リハーサル見学への参加権などが付いた。今年も日本武道館公演を成功させた松田聖子はプレミアムシート2万5000円を発売。スペシャルプレゼントなどの特典がある。どうして普通のチケットは高額化し、数万円の特別チケットまで生まれているのか。


「CDが売れていた1990年代、チケットは今の半額くらいでした。大黒摩季やZARDなどライブをしない人もいた。それでも十分なくらい、CDによる収入が多かった。でも、今は新曲を出しても、CDは売れない。

サブスクの無料配信の収入では限度があるので、何かで代替するしかない。そこで、ファンとの直接交流などに付加価値を見いだした歌手もいる」(芸能記者=以下同)


■高額チケットが生み出す2つの懸念


 ただ、スペシャルなチケットは2つの懸念を生むという。1つ目はファン同士の「断絶」だ。


「ずっと一緒に応援してきたファン仲間っていますよね。でも、お金を持ってる人は特別チケット、持ってない人は普通のチケットとなると、話が合いづらくなる。かたや本人に会って舞い上がっている、かたや米粒のような小さい姿を遠くから見ている。それだと、徐々にお互いに離れていきますよね」


 もう1つの懸念は、ファンの「依存心」を高めることだ。


「高い金額をつぎ込み続けていると、もし何かあっても、その歌手を嫌いになれなくなる。歌手の否定は、自分の否定につながりますからね。有名人も人間ですから嫌な面もあるし、間違いを起こすことだってあります。その時、無理やりな理屈をつけて、肯定してしまう。それをSNSで発信すると、熱狂的なファン以外の人はドン引きします。

高額を使いまくることで、客観性を失い、タレントへの依存心が強くなってしまう。これは、歌手本人のマイナスにもなる」


 依存の問題は逆もある。アーティストが一部の太客ファンに頼る構造だ。


「ライブ料金が1万円だと、ファン以外は見に行く気が失せる。つまり、少し興味を持ち始めたライト層を獲得できない。だから、数万円のチケットも出てくる。高い値段設定は敷居を上げ、歌手のファンへの依存度をますます高めています」


 アーティストとファンの相互依存は今後、さらに高まりそうだ。


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