【城下尊之 芸能界ぶっちゃけトーク】


 最近、舘ひろし(75)がテレビのトーク番組に出演し、いろいろな話をしていた。その中で「実は僕は渡さん(故・渡哲也)から演技力を磨けと言われたことがなく、『ひろし、おまえ、最近芝居が上達したな。

“ダメだ”』と言われたことならあります」と意味不明のアドバイスをもらったと語っていた。そして「石原さん(故・石原裕次郎)も渡さんも、もちろん僕も含めて石原プロって伝統的に大根役者が多い」と続けていた。


 舘が以前の話を語るのは珍しいので、ネットニュースにもなっていた。


 このコラムでも伝えたことがあるが、石原プロの名物、故・小林正彦専務が「渡哲也が演技派だとは言えないが、圧倒的な“存在感”がある。うちはそこで勝負しているんだ」と口にしたことがある。そりゃそうだ。映画でもドラマでも渡さんが出演するだけで、その重みやインパクトが違ってくる。


 実は、僕が渡さんの“凄み”を一瞬で感じたことがある。まだ高速道路にETCがない頃のことだ。いつも石原プロ関係の取材に行っていた複数のリポーター、記者の乗った車が走っていた。


 僕も助手席に同乗していたのだが、たまたま偶然にもその車の前を渡さんが運転する車が走っていて、同じ高速の入り口に入った。渡さんの車は左ハンドルで助手席を越えて料金の支払いをしようとしていたので、僕らの車がクラクションを鳴らした。

合図のつもりだったが、渡さんはかけていたサングラスを飛ばすように外して、こちらを睨みつけた。凄い緊張感……。


 だが、僕たちを認知した渡さんは「オーッ」という表情をして満面の笑みを返してきた。


「いやあ、凄い迫力だったな。『西部警察』の渡さんの怒った時の顔と同じだった」


「でも、その後の笑顔は忘れられない」


 僕たちはそう思った。以前、舘から聞いた話だが、徳重聡ら若手俳優が入ってきた後に渡さんが「ひろし、今の若手は礼儀などがなっていない。先輩としてビシッと厳しく指導しろ」と言ってきたという。舘はすぐに若手を集めて叱責したそうだ。そこで渡さんが顔を出し、「何してるんだ?」と言い出した。


 舘が「キチッと意見しています」と答えると、渡は「入ってきたばかりでかわいそうじゃないか。みんな、もういいよ」と解散させたそうだ。


「俺の立場は……」と舘は笑っていたが、渡さんはいつも後輩に優しすぎる舘に、先輩風を吹かせようという意図だったらしい。

その舘も、存在感はますます大きくなっている。 


(城下尊之/芸能ジャーナリスト)


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