人気居酒屋の女店主は、市場から盗んだ「魚のあら」を調理して客に「良心価格」で提供していた。
東京都江東区の豊洲市場でマグロのカマなど魚のあらを盗んだとして、中央区勝どきで「楽笑」を経営する中国籍の呉華維容疑者(66)が11月27日、窃盗と建造物侵入の疑いで警視庁深川署に逮捕された。
同月21日午後11時半ごろ、呉容疑者は自転車で豊洲市場に乗りつけ、水産仲卸売り場棟にある民間会社の「あらの集積所」に侵入。約30キロ(210円相当)のあらを盗み、自転車の荷台に積んだ発泡スチロールや前かごに入れ、その場から立ち去った。あらは市場内の民間会社が養殖魚のエサとして加工するために、1キロ7円で業者から買い取ったものだった。
22日にも同様の被害が発生し、民間会社の従業員が防犯カメラで犯行の様子を確認。警戒していたところ、26日午前、呉容疑者が自転車を押しながら現場近くに現れた。従業員が防犯カメラ画像とよく似た女がいると気づき、豊洲市場に連絡。市場を管理する都職員が駆け付け、呉容疑者が犯行を認めたため、110番した。
「日中は民間企業の従業員がいるため、取引業者以外は集積所には入れません。夜はシートシャッターが閉まっていましたが、無人の時間帯に侵入していた。本人は淡々と犯行を認め、謝罪していました。通常は朝、店で出す魚を市場まで買い出しに来ているので、人がいない夜にわざわざ現場を訪れていたのでしょう」(豊洲市場管理課担当者)
調べに対し、「マグロのカマや骨は調理すればまだ食べられるので、もったいないと思って持ち出した。カマ焼きにして客に出したり、骨をつみれにして自分や従業員がまかないで食べた」と供述しているという。
■210円をケチって600円で売る
「店から豊洲市場まで自転車で15分ほどです。自身の店で出たゴミを捨てに行った際、集積所に集められていたあらを見つけ、これは使えると思いついたようです」(捜査事情通)
楽笑は都営地下鉄「勝どき駅」から徒歩3分のタワマンが立ち並ぶ好立地にあり、「築地魚卸直営」をウリにして、連日、多くの客で賑わっていた。
「女将はもともと築地市場で仲卸をしていて、安くて新鮮な食材を仕入れられると評判だった。おいしくて量も多く、とにかくコスパが抜群です。カウンターの1人客にも『アジフライ食べて』と気さくに話し掛け、愛想もサービスも良かった。あまりにも人気が出たため、隣の民家を居酒屋に改装して2店舗経営していたほどです」(常連客)
事件後、日刊ゲンダイ記者が楽笑を訪れると<誠に勝手ながら、12月4日までお休みさせて頂きます>という張り紙があった。メニューを見ると、210円をケチって客に出していた「鮪のカマ焼き」は、600円。儲かるハズだ。

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