高市首相の国会答弁に端を発した中国との対立は激化の一途だ。中国軍機が自衛隊機にレーダー照射する事案が発生。

「核心的利益の中の核心」とする台湾問題にくちばしを突っ込まれた習近平指導部は、経済的圧力から軍事的威圧にやり口を変えた。のっぴきならない展開だ。


 コトが起きたのは6日午後、沖縄本島南東の公海上空だった。演習中の中国海軍空母「遼寧」から発艦したJ15戦闘機が緊急発進(スクランブル)した航空自衛隊F15戦闘機に対し、断続的にレーダー照射。いわゆる「ロックオン」で、攻撃寸前の構えをとった。およそ2時間後、別の空自F15にもレーダー照射を断続的に行ったという。


 事案発生から約10時間後の7日深夜、小泉防衛相が臨時会見で「安全な飛行に必要な範囲を超える危険な行為」と非難すると、中国海軍側は「訓練の海空域は事前に公表した」と主張。外務省側も「艦載機が訓練中に捜索レーダーを起動するのは各国の通常手法」と論点をズラして反発。9日は「中国側の正常な訓練活動を妨害し、緊張状態をわざとつくり出そうとしたのでは」とイチャモンをつけてきた。


 軍事ジャーナリストの世良光弘氏は言う。


「レーダーには『捜索用』、狙いを定める『火器管制用』の2種類があり、電波の周波数が異なる。艦艇などはそれぞれの機器を積みますが、スペースが限られる戦闘機は1つの機器のモードを切り替えて使用する。

不測の事態につながるロックオンを意図せず短時間に繰り返すとは考えにくい。一方、ロックオンされた側のコックピットはその間、アラームが鳴りっぱなし。緊張感は想像を絶します」


 日中戦闘機の距離は1回目が28マイル(52キロ)、2回目は80マイル(148キロ)と報じられている。


■2001年には中国海軍機が米軍機に体当たり


「戦闘機が向かい合っていれば、ものの10秒でかち合う距離です。中国側は訓練海空域を事前公表したと主張しますが、時間帯や飛行する機体数などは知らせていない。実態はやりたい放題です。事態がエスカレートすれば、中国の艦艇が空自機をロックオン、海上自衛隊の艦艇をロックオンする状況も想定し得る。2001年には海南島事件が発生した。海軍基地を擁する島から110キロほど離れた南シナ海上空で偵察活動をしていた米海軍機に対し、中国海軍機が威圧の末に体当たり。米軍パイロットは不時着して中国に身柄を拘束され、中国軍パイロットは行方不明となった。日中の今後は予断を許しません」(世良光弘氏)


 中国の要求通りに高市首相が答弁を撤回すれば、集団的自衛権を行使できる「存立危機事態」の判断の幅が狭まる上、台湾有事は該当しないと宣言するも同然。ホント、余計なことを言ったもんだ。


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 こじれにこじれた日中関係はどうなるのか。関連記事【もっと読む】【さらに読む】などで詳報している。


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