【今週グサッときた名言珍言】


「ちなみにジャストミートはギャグではないんです」 
福澤朗テレビ東京系「伊集院光&佐久間宣行の勝手にテレ東批評」12月2日放送)


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「ジャストミート!」が代名詞のアナウンサー・福澤朗(62)。彼がそれを「決めギャグ」と紹介されたことに対して補足した一言を今週は取り上げたい。


 そもそも「ジャストミート!」は、福澤が「全日本プロレス中継」(日本テレビ系)で使っていたフレーズだ。だが、当時のプロレスファンは、福澤の実況を嫌う者が少なくなかった。


 当時は、プロレスで人生を語るようなファンが大半だった。対して福澤の実況は軽かった。うるさかった。そして、どこかプロレスを小バカにしているようにも聞こえた。だから「プロレスを冒涜するな」「福澤を降ろせ」といった声も上がり、脅迫まがいの手紙が届いたりもしたという。


 福澤がプロレス中継担当を命じられたのは、日テレ入社2年目の1989年4月。「暗雲たれこめる、といったレベルではなく、いきなりの豪雨といった感じ」(福澤朗著「昭和最後のアナウンサー」弘文堂=2003年10月1日発売)だった。それまで一度もプロレスを見たことがなかったからだ。


 今まではプロレス好きのアナウンサーが担当していた。その人たちのマネをしても絶対に勝てない。

だったら、「プロレス者」でないことを武器にしようと考えた。自分のようなプロレスに興味がない人にどうやったら興味を持ってもらえるか。「血なまぐさい」「ドロドロしてる」「因縁関係が複雑」「スカッとしない」……。プロレスファンにとってのプロレスの長所は、そのままプロレスの欠点でもあった。だったら、自分は「カラッと、明るく、因縁関係がなくて、カッコいいプロレス中継をやろう」(早大マグネットプラス「MAG!」11年秋号)と決心した。


 そうして生まれたのが「ジャストミート!」という分かりやすいフレーズだった。


 その「ジャストミート」に“禁止令”が下ったこともある。それは「全国高等学校クイズ選手権」(日テレ系)。91年に先輩アナの福留功男の後を引き継いだ彼は当然、自分の代名詞を武器にしようとしていた。だが、スポンサーのライバル社が「ジャスト」という商品を発売していたため、“自主規制”されたのだ。


 当初は、福留の「燃えているか?」をそのまま引き継げばいいのではないかという意見も出たが、福澤は納得しなかった。自分なりの言葉でないと魂がこもらない。

だから、自ら「燃えているか?」をアレンジした「ファイヤー!」を生み出したのだ。


 芸人でも「決めギャグ」を複数定着させるのは難しい。しかし、福澤は、いかに分かりやすく、いかに熱狂を生むかという一心で、複数の決めフレーズを生み出したのだ。


(てれびのスキマ 戸部田誠/ライタ―)


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