【死ぬまでにやりたいこれだけのこと】


 國村隼さん(俳優/70歳)


 ドラマ、映画、舞台で主役をこなし、個性派として活躍する國村隼さん。これまで話題作でさまざまな役柄を演じてきたが、クリスマスイブには主演ドラマ「ドビュッシーが弾けるまで」(フジテレビ系)が放送される。

國村さんに、これからやりたいことを聞いた。


  ◇  ◇  ◇


 来年で俳優デビューして50年になります。これまでいろんな役柄を演じてきましたが、今回のドラマ「ドビュッシーが弾けるまで」は、時計店を営む男が先立たれた妻に背中を押されるようにピアノを弾くようになる物語です。このドラマで初めてピアノの鍵盤に触れて、新鮮な驚きがありました。


 撮影のために絶対にマスターしなければならないけど、難しくて簡単にはピアノを弾くことはできない。でも、やっているうちにだんだん楽しくなってきて、この作品が終わっても、これでやめるのはもったいないと思うようになりました。せっかくこんなに練習しているのにちゃんと弾ける域まで行けないのは悔しいし、本気になってやったらもっと面白くなるという気がしています。ドラマのためだけじゃなく、これからもやってみたいですね。


 これまで演じた中で今も印象に残っているのは提灯に絵柄を描く、提灯屋の大将とか、語学の天才で8カ国語を話すことができる軍人とか。とくにこの軍人のドラマの時はドイツ人の捕虜の横で同時通訳するシーンがあって、本当のドイツ人の方々が居並んでおられてプレッシャーでしたね。そのために必死に勉強しました。もうちょっとやったら、流暢とまではいかないけど、ドイツ語の文章くらいは読めるようになったかもしれないのに、もったいなかったなと思っています。


■趣味は開高健の「私の釣魚大全」を読んだ再開した川釣り


 趣味は釣りです。イワナとかヤマメの川釣りです。育ちが大阪の郊外で近くに川があったので、小学生の頃から延べ竿に糸を結び、ご飯粒をつけたりミミズを掘ってつけたりしながら、川釣りをして遊んでいました。大人になるにつれて釣りからは遠ざかっていましたが、また始めようというキッカケがありました。30歳過ぎくらいでしょうか。作家の開高健さんの「私の釣魚大全」という本を読んだんです。


 その中に釣りの後に地元の人たちと囲炉裏を囲んで「逃がした魚はでっかい」なんて、面白おかしくホラ話をするくだりがありまして、こんなふうに釣りを楽しむのもいいなと憧れましてね。子どもの頃とは違う釣りをやってみたいと思うようになって始めてみました。開高さんはルアー釣りの人です。僕もまずルアー釣りを始め、それからフライフィッシングの師匠に出会って教えてもらいました。今はイワナやヤマメの毛ばり釣りです。



■イワナやヤマメですが、今はクマが怖くて(笑)

 イワナとヤマメではイワナの方が鷹揚な性格なのでよく釣れます。

関東なら、富士五湖の近くとか北の方なら那須塩原あたりまで行きます。釣果ですか? 僕は下手くそなので、ボウズも多いですね(笑)。


 でも、川が流れているのを見ることや緑が好きですからね。澄んだ川の流れの中でイワナやヤマメが泳いでいる姿はとてもキレイです。実はずっと川釣りに出かけたいと思っているのですが、今はクマがね(笑)。山の中に行ったら絶対にいますよ。出合い頭にクマに遭遇なんて怖いじゃないですか。なんぼ行きたくても行けません(笑)。


 僕はお酒が大好きですが、さすがに、昔とはお酒との付き合い方が変わりました。以前は惰性で飲み続けるパターンが多かったけど、今はダラダラと飲むことはなくなりました。お酒は食事についているものという感覚です。それから、お酒を飲む時間をすごく楽しみたいと思うように変わってきました。


 若い時はウイスキーはあまり飲まなかった。でも、今はウイスキーと芋焼酎ですね。ラフロイグとかシングルモルトが面白いと思っています。今度のドラマでもウイスキーを酌み交わすシーンが出てきます。とくにシングルモルトは造られている場所や銘柄、年代によって味わいがまったく異なります。それをハイボールにすると薄いので、最低でもオンザロック、できればチェイサーをつけてそのまま生で飲みたい。これからはそんなふうにアルコールと付き合っていきたいです。


 死ぬ前に何を食べるか、ですか? 麺類も好きだけど、僕はおにぎりが好きで、食べるなら圧倒的に塩むすび。何も入っていないただの塩むすびが2個あったらいい。1個は海苔を巻いたりして。おかずはたくあんがあるくらいでいい。


片平なぎささんと夫婦役


 クリスマスイブに放送されるドラマは僕と妻役が片平なぎささん、僕にピアノを教えてくれる青年は尾崎匠海君、その恋人の加藤史帆さんのほぼ4人のドラマです。

僕は亡くなった妻から手紙が届き、ピアノを弾いてみる。教えてくれるのが尾崎君で、彼はピアノの道に進みたいために、母親に経済的に無理をさせたことで心にキズを負っている。そんな2人が出会う。そして妻が生前、弾いていたのがドビュッシーの「月の光」というお話です。


「月の光」は聖夜にはピッタリの音楽だと思います。 (聞き手=峯田淳)


●12月24日放送 スペシャルドラマ「ドビュッシーが弾けるまで」(フジテレビ系、午後10時~)


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