驚いた。本末転倒もいいところだ。


 政府が物価高対策として活用を促すおこめ券。鈴木憲和農相が13日、視察で訪れた山形県で「多くのスーパーでは、米だけでなく食料品全般を買うことができる」と話し、有効性を訴えたのだ。さらに、「それをふまえ、どの手法が食品高騰に対する地元民の負担低減に役立つか検討してほしい」と続けた。ついに懇願か──。


 鈴木農相は就任直後、コメ高騰を受けて、おこめ券配布を威勢よく打ち出した。しかし最近では、活用するかは「自治体の判断に委ねる」と付け加えるなど、すっかりトーンダウンしている。


 事務経費が上乗せされるおこめ券は悪評ふんぷんで、配布を見送る自治体が日に日に増えている。すでに大阪府交野市や福岡市、広島市などが、配布しない方針を固めた。他にも、例えば福島県。福島民友新聞(14日電子版)によると、県内59市町村のうち、少なくとも22市町村がおこめ券を配布しない見通しだ。「配布する」と答えたのは、磐梯町のみだった。


■今さら取り下げられない


 一方で、それでもなお、農水族からはおこめ券の“効果”を主張する声が聞こえてくる。


「新米の売れ行きが非常に鈍い。売れ残ってしまうと、来年にはとてつもない量が余り、米価の大暴落につながりかねない。コメ在庫を売りさばくには、おこめ券しかない」(自民党関係者)


 霞が関でも、官僚などが鈴木農相を擁護する。


「近く米価が下落するとも予想されているが、5キロ2000円台だった頃と比べると、まだまだコメは高い。おこめ券の必要性はある」(農水省関係者)


 うーん。本当の目的は消費者の生活を支えるためじゃないことがよく分かる。


「バッシングを受け、農水省は迷走しています。おこめ券を今さら取り下げるわけにもいかず、批判をかわすために『他の食品にも使える』『活用するかは自治体次第』などと発信せざるを得なくなっている。もはやコメ高騰対策という点では、当初の目的から逸脱しています」(農水省担当記者)


「他の食品にも使えるなら、おこめ券じゃなくてもいいじゃん」というツッコミは、鈴木農相に届くか。


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「おこめ券」配布に自治体の反発が相次いでいる。【もっと読む】【さらに読む】で詳しく報じている。


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