【あの頃、テレビドラマは熱かった】#19


 「キツイ奴ら」
 (1989年/TBS系)


  ◇  ◇  ◇


 バブルが絶頂期に向かっていた1989年。1月7日までが昭和64年、8日から平成元年という特別な年でもある。


 視聴率上位では、NHK朝ドラや大河は30%超えが当たり前、民放ではフジテレビ系月9「教師びんびん物語Ⅱ」や木9「ハートに火をつけて!」、TBS系「水戸黄門」などのナショナル劇場(月8)が20%台半ばから、時には30%近い数字を叩き出していた。


 でも、この年の連ドラを語るとき、TBS系「キツイ奴ら」は外せない。視聴率では10%をちょい超えるくらいだったくせになぜ? と言われるかもしれないけれど、“びんびん”の田原俊彦(当時28)と野村宏伸(同24)よりも、こちらの小林薫(同37)と玉置浩二(同30)のコンビのほうが、僕にははるかに魅力的だった。


「キツイ奴ら」が放送されたのは水曜夜9時枠。前クールのドラマがメインキャストの不祥事で打ち切りになり、購入物の「冒険野郎マクガイバー」でつないだあと、年明け1月4日に始まった。


 金庫破りが得意なインチキセールスマンの吾郎を小林、その弟分の軽薄男・完次を玉置。色男で調子のいい完次が年増の女性(吉行和子=同53)からちょろまかした800万円が原因で、その息子(柳葉敏郎=同28)から追い掛け回される話。70年代の「時間ですよ」や「ムー」などの演出で“鬼才”と呼ばれた久世光彦氏が得意とする、人情コメディーとでも言おうか。


 演技経験の浅い玉置を、小林が懐の深い演技でがっちり受け止めて、それはそれはいい“兄弟分”だった。そして毎回のように2人が“流し”の設定で歌い出す、そのデュエットが最高! ロック、ムード歌謡、演歌のおなじみの曲が、独特の“玉置節”とそれに負けない“小林節?”のハーモニー。この味わいは、絶対に他では見られない貴重なものだ。


 視聴率が当時としてはパッとしなかったとしても、僕にとってはこの年の代表作。

当時アラフォーの篠ひろ子は色っぽかったし、同年に“鉄骨娘”としてブレークするハタチくらいの鷲尾いさ子も可愛かったし。


 当時の僕は、ドラマを放送している時間は仕事場か酒場のどちらかで、もっぱら忘年会のビンゴで当たった14インチのテレビデオでの視聴だった。VHSに録画したバラエティーやドラマを早送りしながら見ては消していた僕が、このドラマだけは等倍で見ていた。


 そこには、最近のドラマではめったに見かけない、泥くささと熱と、押しつけがましくない人情があった。そして唯一無二のあの歌声も……さて今回はこのあたりでござりまする(↑そりゃ春日局だ)。


(テレビコラムニスト・亀井徳明)


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