【続続・あの有名人の意外な学歴】#4


 及川光博


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「生来の上品さのおかげで、嫌みのないドラマに仕上がっていた」と制作会社関係者がベタ褒めする相手は、14日に最終回を迎えた「ぼくたちん家」(日本テレビ系)にゲイ役で出演した「元祖王子様」キャラの及川光博(56)。連ドラで主演を務めるのは2004年の「ミステリー民俗学者八雲樹」(テレビ朝日系)以来21年ぶりだ。


 見るからに育ちのよさを感じさせる及川。学校も「良家の子弟が集まる」(学習塾経営者)といわれる成城学園(東京・世田谷区)に通った。同校には幼稚園から大学まであるが、及川が入ったのは中学からだ。小学校は地元・大田区の公立校。すでに王子様キャラが開花していた。高学年になると、児童会長に選ばれた。勉強もよくできた。全国模試で1位を取ったこともある。


 女子からモテすぎて、男子からは嫉妬のだった。キザオと陰口を叩かれたうえ、6年になるとそれまで仲良くしていた友達からも無視され、相当なショックを受けた。地元の中学に進学する気になれず、兄が通う成城を受験したのだった。


 だが、成城に入っても小6の時のトラウマはいつまでもついてまわった。

高3の国語の授業中、教師が生徒たちに机に顔を伏せるように命じた。そして「自殺を考えたことはあるか」とたずね、手を挙げるようにうながした。そのあと、職員室に呼び出されたのは及川だけだった。


 といっても、常に暗い影を引きずっていたわけではない。成城でも女子からのモテぶりは変わらず、ファンクラブが結成されるほどだった。ここでも生徒会長を務めた。小学校の時のように男子から疎まれるのを警戒して、中3になるとロックバンドを組んだ。同級生と比較されるような対象ではなく、妬みをはるかに飛び越える存在になれば、何も恐れる必要はないと考えたのだ。文化祭のステージで歌って踊る及川はすでにスターだった。女子からはキャーという歓声が飛び交い、男子からは憧れの目が向けられた。


 大学は成城の法学部に内部進学した。エンターテイナーを職業にしたいと考えるようになっていた。

音楽に加え役者にもチャレンジしたいと、大学の授業の合間に俳優養成所に通いだした。芸能界入りを目指す及川の障壁となったのは親族たちだった。全員が反対したのだ。両親と何度も話し合い、「25歳までやってダメだったら家業を継ぐ」という約束をして、なんとか許しをもらった。父は薬局や飲食店などを手広く経営する実業家だった。


 両親と交わした期限は守れなかったが、26歳でCDメジャーデビューを果たし、その2年後には俳優デビュー。竹野内豊主演の「WITH LOVE」(フジテレビ系)でいきなり準主役を務めた。


 小学校以来の王子様キャラは今も健在。四半世紀以上、続けているワンマンショーツアーでは及川が“ベイベー”と呼ぶ女性ファンたちから黄色い声援が飛ぶ。根っからのエンターテイナーなのである。


(田中幾太郎/ジャーナリスト)


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